2022.12.20 リアルDr.コトー  その3

翌朝、前日の雨風は止み(と言っても時々降ってくるのが島の気候らしく、何回か降ります)、島内を電動自転車で周ることにしました。  →前回の記事はこちら

与那国島は一周27キロとはいえ起伏が激しいとのこと。

島に沿って道があるので、走っていきます。

サトウキビ畑を横に、ひびの入ったアスファルトを進んでいきます。

晴れると一気に日差しが強い!

日焼け止め塗っておいてよかった。

石垣島の子供には瞼裂斑(瞼裂班)が多いという論文がありましたが、納得。 → 「目が黄色い」

加えて、白内障も進行しやすいだろうな~

展望台に行っても、与那国馬の放牧場を通っても人はいません。

念のため、グーグルマップに次の目的地を入れることにしました。

 

Dr.コトーの診療所を目指します。

ひどい急斜面を降りることになり、途中自転車は置いて進みます。

テレビで見たDr.コトーの志木那島診療所。

一昔前の診療所(昭和~)って感じです。

既にリアル診療所に行き、リアルDr.コトーに会った後もあり、感動はそれほどでも。

でも、自身が離島医療を勉強するきっかけとなったので、見ておかねば。

 

自転車を置いた場所までの上りの急勾配、更に自転車を押しての急勾配に泣きそうになります。

徒歩用にマップを設定していたようで、狭い獣道みたいな経路にはまり込んでしまったのです。

人影は全くない。

役場か診療所にヘルプ!?は避けなければ(いい迷惑)。

過酷な筋トレを課された…のだと言い聞かせ、歯を食いしばり脱出。

 

日本国最西端之碑。

ついに日本の最西端に。

2019年に丸木舟で男女5人が台湾から45時間かけて与那国島にたどり着いた記録が。

それだけ近いということ。

事実、以前は台湾との行き来が盛んな島だったそうです。

 

クルマエビの養殖場・製糖工場を通れば、ここの産業医は?

小・中学校を通れば、学校医も診療所医師が兼務だけど、眼科医は?歯科医は?と、思うこと色々。

 

約半日で1周出来ました。

起伏の多さと急斜面獣道迷い込みにより、体力消耗激しい院長。

ほぼ誰にも会わない道路。

ただの観光というより、ダイビング・釣りの客が多いようです。

 

もし眼科の診療のお手伝いができる日が来たら…

不安もありますが、自身の経験があれば役に立つのでは…とも。

目下、自身のフィールドは『眼科はせ川こうクリニック』。

20年以上にわたる患者さんの眼の健康を最後まで守ることが、一番の使命だと思っています。

離島よりは恵まれた立場ですが、地域医療の信念は変わらない。

総合内科ではないですが、総合眼科(造語)として何でも受け入れる姿勢は貫きたいと思います。

 

与那国空港はとても小さな空港です。

Dr.コトーのポスターが貼ってあります。

島には映画館がないのですが、町の体育館で上映会が開催されたとのこと。

映画館もなくてもいいけれど、あると嬉しい施設のひとつ。

商店も島に数件あるのみで、商品は非常に限られています。

厳しい現実はこんな所にも。

 

なぜか空港の待合室は賑やかというか騒々しい。

中学生たちがおしゃべりしたり、ふざけあったり。

行き先は石垣島。

『何かあるんですか?』気になるオバサン(院長)質問。

『バスケの試合に行くんです』

飛行機に乗って、バスケの試合に!?

離島の飛行機は、こちらの地下鉄と言う感じでしょうか?

島で生まれず(産科施設がない)、生後少し経ってから島に戻ってきた子たち。

高校がないので、15歳になれば島を出ることになる子たち。

 

今回、いつもと違う学びや、考えることが大容量。

離島医療の重みを感じた与那国島の医療体験でした。

 

**********************************************

 

県立八重山病院(石垣島)は別の機会に。

今年も一年ありがとうございました。

 

こちらもご覧ください

 

 

 

カテゴリー:健康 公センセの想い

2022.12.13 リアルDr.コトー   その2

与那国島へは、プロペラ機で入島します。  →前回の記事はこちら

蒸しっとした暑さと、ひどい強風と雨(突然降って突然止む)。

南の島~のイメージは到着後、すぐ打消し。

 

島は周囲約27キロ。

人口は1700人弱(ちなみに当院がある名古屋市緑区は約25万人)。

与那国診療所は、島に3つある集落の最も中心の集落にあります。

町立ですが、地域医療振興協会(JADECOM)の管理となっています。

所長(といっても医師一人)こそ、リアルDr.コトーのS先生です。

S先生は、JADECOMの理事ですが、先月で医師不在になり、急遽那覇から与那国に移住し、診療されています。

無医島にするわけにはいきません。

沖縄県には離島が多くあり、JADECOM、県立病院からの派遣、その他経路で医師が診療に従事しています。

みんなリアルDr.コトーです。

 

この日は、割と一般的な病気ばかりだったので、救急搬送をしないといけないケースはありませんでした。

電子カルテが導入されており、CTも設置。

地元の患者さんはそれほど多くないのですが、観光客の増加に伴い多忙になる時も。

一応何でも見ないといけないので、総合診療の現場でもあります。

そのため、初期研修医の地域医療実習機関にもなっており、1年目の医師が1か月研修に来ていました。

いい年をしたオバサン医師(院長)が突然何しに?と、当初、不審そうな目。

そうですよね~(ちゃんと、自分の経歴を説明)。

 

島の医療体制で限界と思ったら、すぐ石垣島や本島(沖縄)に紹介するのが、離島医療の約束。

一人で抱え込まないのは、何処の医療でも同じ。

ヘリや飛行機・船で島外の医療機関に受診して、軽症なら何より。

手遅れにならないように見極めることは、島医療で大事なことです。

Dr.コトーは一人で大手術もしてしまいますが、それはドラマならでは。

 

眼科・皮膚科・耳鼻科・整形外科・産婦人科は月に一回2~3時間外部からの医師による診療があります。

数時間の診療なのは、医師が日帰りのため。

 

カバーが掛かった眼科の機械は、割と新しい。

外来開設に合わせて導入したとのこと。

しかし、最低限のものしかなく、特に眼科は精密光学機器の発展が著しいので、初期の診療にとどまらざるを得ない歯がゆさを感じました。

緑内障のフォローは難しい…

 

先日、鉄粉が入った患者さんが来院。

取れず、石垣島の眼科へ紹介したとのこと。

『どうすれば?』と聞かれ、『眼科医なら顕微鏡下で鉄粉を削り取ります(お手の物)』と答えるも、眼科医でも顕微鏡がない場合は無力だ…と気付く院長でした。

 

産婦人科も月に1回。

妊婦は予定日1か月前になると、島から出て、石垣島や本島・里帰り出産の準備をします。

それ以前に破水でもすれば、ヘリで搬送です。

 

島に暮らす人は、島医療の限界を知っているから、島外に行くことにはそれほどハードルが高くないようです。

石垣島へは、飛行機で25分、フェリーで4時間ですが、生活用品や診療など結構日常的に出かけることが多いようです。

 

民宿の食堂で3人で夕飯を。

ひどく疲れていた院長。

お疲れさま!の一杯が欲しいところ。

S先生は飲まない(飲めない)のだとか。

常にオンコール。

携帯の119が鳴ったら出勤です。

離島では、飲めない体質の方がいいようです。

土日は休みですが、島外からは出られません。

かといって、島内で何をするかというと…?

好きな趣味やすることがあればいいのでしょうが。

院長も若い頃、岐阜の地方の病院に赴任、仕事後は手持ち無沙汰になった記憶が。

結局、地元のオジサンオバサン(と当時は思っていましたが、50~70代)の文化人サークルと称する飲み会に入れてもらいました(一応紹介承認制)。

代診の派遣でまとまった休暇がとれるような制度はあるそう。

医師も人間、解放される時間は必要。

 

島医療の熱い話を聞きながら、医師の生き方あれこれ、自分の来た道あれこれ交錯。

布団に入ってもなかなか寝付けませんでした。

 

*次回に続きます*

カテゴリー:健康 公センセの想い 公センセの日常の出来事

2022.12.6 リアルDr.コトー  その1

地図を眺めるのが大好きな院長です。

行った所は、回想を。

行ったことがない所、行ってみたい所は想像・妄想を。

 

北は稚内・利尻島・礼文島まで(学生時代)。

南は石垣島まで(家族旅行)。

石垣島は、子供たちが小さい頃だったのでマリンスポーツ三昧。

そして、西表島を筆頭に周囲の離島観光。

ドタバタの珍道中だったけれど、過ぎてしまえば懐かしい思い出(親だけ)。

 

さて、石垣島・西表島を南下すると、日本の最西端の島『与那国島』。

どんなとこだろう?

以前から気になってはいたものの、行くにはハードル高し。

名古屋から1791キロ。

石垣島から117キロ。

日本最西端の岬の先は、111キロ先の台湾。

 

与那国島は『Dr.コトー診療所』のモデルにもなっている島です。

吉岡秀隆さん演じる主人公『Dr.コトー』と島の人の医療をめぐるヒューマンドラマ。

自身の吉岡さんのイメージは、『北の国から』の純、『男はつらいよ』の光男。

どちらも、ほぼリアルタイムで見たので、院長の年代が分かるというもの。

『Dr.コトー診療所』は、現実にはない虚構(医療ドラマはほぼそうです)で職業柄興味もなく、つい最近再放送で見たくらいでした。

 

院長は、旅先・学会先で、つい病院や医院の看板や建物に目が行ってしまいます。

ここでどんな先生がどんな診療をしているのだろう?

地方に行けば尚更で、時には宿の人に質問してしまいます(変人の客かも?)

 

Dr.コトー診療所のロケ地やモデルの診療所が今もある与那国島。

リアルな診療所が実在するはず。

実際、町立の与那国診療所があります。

そこではどんな医療がされているの?

架空の島『志木那島』でなくて、与那国島のリアルDr.コトーに会いたい。

離島医療を知りたい、勉強したい!

動き出した知的好奇心は止められず…

手紙をしたため、電話をし…と、我ながら驚くほどの積極的なアプローチにて、見学出来ることに。

 

実は、院長は過去に一度だけ離島医療に従事したことがあります。

まだ、大学病院にいた頃。

当時、鹿児島のある離島に月に一度、ローテーションで外勤がありました。

土曜の朝に名古屋空港(小牧です)を発ち、鹿児島で別の飛行機に乗り換え、島へ。

土曜の午後と日曜の午前診療を終えて帰路に。

1か月に1度の外来に、多くの患者さんが来院されたこと。

急を急ぐ病気や、経過を見ないといけない患者さんは、奄美大島や鹿児島に送るしかなかったこと。

他科の医師と話して、色々な生き方・働き方があるのだと知ったこと。

大学病院しか知らない若造(院長)は、結構な刺激を受けました。

 

*続きは次回に*

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