2021.11.30  オバサンのおかげで…

先日、地下鉄で街へ。

途中まで文庫本を読み、スマホに切り替え…

知らぬ間にウトウトしていたようです。

停車駅の駅名表示にハッとして、『あれっ!?もう丸の内?』と、隣に話しかけます。

院長の顔をまじまじと見たのは、眼鏡をかけた60代と思われる年上オバサン。

誰?

当然向こうも、このオバサン(院長)どうしたの?と驚いた顔。

日曜日の夫との外出モードになっていたよう。

『失礼しました!家族と一緒に出掛けていたと勘違いしまして…(そんなことある?)』冷や汗。

『そうでしたか。それより、乗り過ごされなかったですか?』

『名古屋なので大丈夫です』

2駅の間、なぜか話が盛り上がってしまったオバサン同士でした。

年上オバサンは、桑名集合のウオーキングに行くそうで、お勧めのコースを教えてくれました。

楽しいエピソードになったのは、隣がお姉さんオバサンだったおかげ。

もし、隣が○○だったら違う展開が…また妄想で遊べそうですが、失態には注意です。

 

寝過ごした一件で、忘れられないのは、三男のハプニング。

当時小学1年生の三男。

スイミングクラブの送迎バスは、大人で徒歩15分の学区外停留所まで。

しかも、時間は、当院の診療時間開始後です。

1年生になったばかりの子供一人でお迎え場所まで行かせることは、当時、心配で出来ませんでした。

仕事をしているために、送迎バスの停留所まで連れて行って乗せるだけの時間が取れない歯がゆさ。

わずかな隙間時間を助けてほしいと思っているワーキングママは今も多いはずと思います。

 

対応策として、自院の傍の停留所から市バスに乗せることにしました。

送迎バスより早く出ることになりますが、診療前にバス停に一緒に行き、乗車を確認することが出来ます。

乗車時、運転手さんに行き先を告げる

運転手さんのすぐ後ろの席(最前列)に座る

2つの決め事です。

走り去るバスに手を振って、午後の診療に臨む院長でした。

 

ある日の診療中、受付から電話の取次ぎがありました。

出てみると、オバサン(恐らく60代~70代)。

『○○(息子)君のお母さんですか?』

『はい、何か?』

『今○○君に代わりますね』

『○○ちゃん!?どうしたの!?』

『うんとね~新瑞橋まで来ちゃった~』

 

オバサンの話によると…

その日は遠足の日だったので、疲れてバスの中で眠ってしまったそう。

降りるべき停留所はとっくに過ぎて、終点で降りるオバサンに気づかれたという始末。

息子は、思わぬ展開に泣きべそ。

家の電話番号は覚えていなかったけれど、クリニックの名前は言えた息子。

オバサンが公衆電話から当院に電話をかけてくれました。

かくかくしかじか…

『では、折り返しのバスに乗せますね。○○(乗車場所)のバス停で降ろしてもらうよう、さっきの運転手さんに言っておきますね』

『お手数おかけしました。よろしくお願いいたします』

 

ドキドキ…

無事に息子は戻ってきました。

オバサンのおかげ。

母は安堵と自責の念。

 

あの時の出来事は、息子にとっては大事件。

今もしっかり覚えています。

もちろん母もしっかり覚えていてますが、思い出すたびに胸が痛むエピソードです。

『あの時は~』と笑い話にしてくれる息子に、働き続けてきた母は救われます。

今日30日は三男の誕生日。

大人になっても、母にとっては小さいままの息子が心の中にいます。

 

オバサンのおかげで…

そんな日常の一コマに登場する、名もなきオバサンになれたら…と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー:公センセの家族・恩師・友人など 公センセの日常の出来事

2021.11.16 目が黄色い!?

日常診療で結構多い訴えのひとつは、『眼が黄色い』

医学生の時は、眼が黄色い=黄疸=肝機能障害と覚えたものですが、医療も発達し早期発見早期治療の現在、少なくとも日常診療で黄疸を見つけることはありません。

しかし、患者さんの中には、『黄疸では?』と問診に付け加えている場合も。

 

気にして来院される患者さんの多くは女性です。

茶目(角膜)の3時、9時方向の白目(結膜)が黄色っぽくなっています。

やや隆起している場合もあります。

『瞼裂斑(けんれつはん)』と言います。

結膜に限局し、角膜には及ばないのが特徴です。

病気ではないので、治療の必要はありません。

例えて言うなら『眼のしみ』

紫外線の曝露が要因とされています。

加齢により、紫外線の曝露量が蓄積され多くなるので、30代くらいから見られることも。

 

ただし、瞼裂斑に炎症が起こり、充血や痛みが出れば、瞼裂斑炎(けんれつはんえん)となり、炎症を抑える治療をします。

また、瞼裂斑は時として、ドライアイの症状を悪化させます。

瞼裂斑が大きめのドライアイの人は、涙が瞼裂斑方向(3時、9時)に流れていきやすい(盗涙とも言われます)ので、ドライアイ症状が悪化しやすくなります。

治療の必要がない旨を伝えると、安心される一方、長年(多くは加齢)の紫外線曝露と知りショックを受ける患者さんも。

院長自身は、意外にも、瞼裂斑を認めません。

眼科医30年、専ら暗室での仕事が奏功しているのかも?

 

実際、中学生を対象に、石川県の内灘町と沖縄県の西表島で瞼裂斑の出現を比べたスタディがあるのですが、より紫外線の強い西表島では中学生でも瞼裂斑が認められた報告があります。

さらに、アフリカでは、出現率が高くなっています。

 

さて、茶目(角膜)に白っぽい出来物が…と来院されるのが『翼状片(よくじょうへん)』です。

瞼裂斑と同じ位置(多くは鼻側)に出来ますが、白目(結膜)の一部が、角膜に侵入してきます。

自覚がないことがほとんどですが、大きく侵入してくると、充血や異物感を伴います。

さらに、角膜中央に向かって進行すると、乱視が強くなってきます。

翼状片は何年、何十年もかかって進行します。

しかし、乱視が強くなってきたり、黒目(瞳孔)と茶目(角膜)外側との真ん中くらいまで侵入したら、手術を勧めます。

翼状片の原因も、紫外線の曝露と考えられています。

 

 

病院時代には、瞼裂斑が主訴の患者さんを診ることはありませんでした。

重症疾患や、希少疾患が多くを占めます。

開業して、地域のお医者さんになると、ちょっとしたことでも相談に来院されます。

治療の必要がないものについては、心配ないとお伝えしますが、共感と安心を提供することも大事だと思っています。

 

オバサン(院長)になって、眼科医経験・人生経験を積んだ分、共感できることは多くなりました。

年を重ねるのも悪くないと思うこの頃。

オバサンだけどオバサンじゃない!のモットーで。

(このニュアンスわかってもらえますか?)

 

こちらもご覧ください

サングラスどう?

 

 

 

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2021.11.9  もはやお母さんではない

就学時健診の時期です。

近隣の小学校3校を受け持っているので、自転車で出かけます。

 

毎度のことながら、校門には、習い事のチラシ配りの人が。

数年前までは『お母さんですか?』と聞かれたものの、今は声もかけられません(当たり前ですが)。

 

この秋から読み始めた源氏物語(現代語訳)で、主人公・光源氏は40歳で孫を抱くシーンがあります。

65歳くらいの尼君(明石の御方の母)に至っては、十分品よくふるまっているようだが、もうろくして耳もよく聞こえない様子(と書かれています)。

はるかかなた、平安時代は、寿命も短い分、人生の営みも早かったのでしょう。

現代は、結婚出産も遅くなったとはいえ、院長の年齢なら『おばあさんですか?』と聞かれて『そうです』と答える人もいます。

健診の介助に付く若い先生は、息子たちと同世代。

早い家系なら、おばあさんです。

 

担当する小学校は全て視力検査をしてから、眼科の健診になります。

教室に自分で入ってこられる子、母親と手をつながないと医師の前に立てない子、入り口で泣いて入ってこられない子、診察の前で急に泣き叫ぶ子などなど色々です。

しかし、入学後の学校検診では、ほとんどの子は問題なく健診を受けられます。

ほんの半年ほどですが、1年生になり心にも成長が見られます。

ルールに従うことも、多くの子供ができるようになります。

1年生と2年生、2年生と3年生など、学年による心身の成長差はいつも感じることです。

 

今回視力が出なかった子(B/C/D)には、近日中に眼科での再検査を勧めます。

また、気になる眼の症状(斜視や眼の病気)がある子も、眼科の受診を勧めます。

『はい、わかりました』という保護者。

『ホントに見えなかったの!?』と子供に詰問する保護者。

『ふ~ん』と全然気にしていない様子の保護者。

保護者も色々です。

 

視力は、本人の見え方なので、再検査したときに異常はないかもしれません。

しかし、遠視や近視・乱視や何かの眼の病気がある場合もあります。

異常がなければ『良かったね』

異常があれば『早めにわかって良かったね』

 

就学時健診で視力D/Dだった患者さんが来られました。

少し遠い地域からの来院です。

強めの近視がありましたが、どんな度数を入れても矯正視力が出ません。

本当に近視なのか(子供は、見かけ上の近視ということがあります)、眼の奥に異常はないのか、精密検査をしました。

すると、見かけ上の近視で、実際には近視ではありませんでした。

また、眼の病気は何もありませんでした。

視力は出るはずなのに…

トリックを使って視力検査をすると、ちゃんと1.0まで出ました。

急を要する眼の病気はないこと、心因的な要因があること、視力は出ることをお母さんにお話しして経過を見ています。

『大丈夫!』

『安心して!』

お母さんによくかける言葉です。

 

先日81歳で校医をしておられる先生とお話しする機会がありました。

いまだに、自院の診療も。

81歳から見たら、まだまだ自分(院長)は若造ですが『お母さんですか?』と聞かれる年でもなし。

定年が来るまで、学校医頑張ります。

 

こちらの記事もぜひ、ご覧ください

お母さんですか~?

年齢分の長所

受診のお勧め用紙を貰われたら早めの受診を

就学時健診の母?

学校検診

健診のお知らせの受診率と育児の放棄

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事 眼に関すること

2021.11.2 身代わりどじょう

信心の浅い院長ながら、寺社仏閣も訪ねるのは好きなミーハーです。

しかし、眼科医ゆえ『目』に関するご利益処には、一番関心があります。

学会先でたまたま見つけたお寺。

スタッフが見つけてくれたお寺。

患者さんが教えてくれたお寺。

その度に、当院の患者さんの眼病平癒を願い、お守りをいただき、院内に。

もちろん、眼科医(院長)が診断治療の道筋を示し、患者さんが点眼・通院順守の前提あってのプラスαですが。

現代医学が発展しても、治らない病気も多々。

しかし、現代医学だからこそ、少しでも進行を遅くしたり、不自由さを最低限に出来る治療を、医学的根拠を持って提示できます。

 

久しぶりに、見つけた『目』のご利益処。

しかも、縁日が開催される日が、たまたまの休診日。

この日を逃したらいつ行けるか…

決行すべし!

 

目的地は、富田林(大阪府)の瀧谷不動明王寺。

 

新幹線・近鉄経由で。

駅からは徒歩15分とのこと。

グーグルマップを用意するも、人の大きな流れが。

付いていけば間違いなさそうです。

お参りに向かう人は、平均年齢70歳超。

ウォーキングではないので、緩い服装、足取り。

縁日なので、出店も多く、のぞきながら歩いて行けます。

関西弁の話し声が良いBGMです。

豆・寿司・炊き込みご飯・野菜果物・こんにゃくなど食べ物。

洋服・帽子・靴下・タオル・靴・食器などなど。

全部合わせると、よろづや(雑貨屋)が開けそう。

 

目的の『瀧谷不動明王寺』に到着しました。

「日本三不動の一つ」といわれ、目の病気にご利益があるとされています。

いつものように、患者さんの病気平癒を願い、「晴眼守」のお守りを。

 

ここには、本堂に参る他に、色々な建物があります。

 

今回の目玉?は、『身代わりどじょう』

お不動様に目を助けてもらおうとお願いする際には、どじょうを持って参り、それを瀧谷の川に放してお願いすれば、このどじょうの眼が自分の眼の身代わりとなり、眼病から助けてもらえると伝えられています。

言い伝えでは、この川に放たれたどじょうは、すべて片眼は失明して白くなっているそうです。

お不動様がどじょうの姿となって、自らの片目を捨てて身代わりになってくれるからだそうです。

昭和の初めに、お坊さんが調べたところ、川には片眼の白いどじょうばかりだったそうな。

 

眼科医としては、どじょうが、遺伝性の角膜混濁をきたす病気に罹っていたのではないか…とも思うのですが(罰当たり)。

ヒトだったら、○○、○○などなど…と、角膜混濁をきたす病気とその原因を考えてしまうのも、職業柄。

 

信心が足りないながらも、どじょう流しをしてみます。

缶に入ったどじょうの稚魚が並べられています。

一つ選んで購入します。

お願いを込めて、樋からどじょうを優しく放流します。

そこから、下の川に下っていきます。

小さな浅瀬ですが。

 

お願いを背負って大きくなってね。

 

神聖な場で、浅草のどぜう鍋、安来のどじょうのから揚げ…浮かぶ院長は、本当、信心より煩悩(反省)。

 

眼病以外に『芽の出るお不動様』と言われ、勉学、スポーツ、芸事、商売などにも御利益が。

また、縁日の日、経木は当日の護摩行で唱えてもらえます。

そのため、多くの人で賑わうお不動さんのようです。

 

『晴眼守』で患者さんの顔が少しでもほころんでもらえたら幸いです。

院内におまつりしてあります。                           

 

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2019.11.26 二人でお上りさん

2018.6.26 目の霊山

2017.11.21 余呉へGO,GO

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