2019.11.12 ずっとAだったのに…
中学3年生のB君が来院しました。
『最近、プリントとかを離して読むようになったんです。離したほうが見やすいって言うんです。若いのに』と付き添いのお母さん。
裸眼視力は右1.2左1.2でしっかり見えています。
近くの見え方も、右1.0左1.0で全く問題なしです。
『学校の視力検査ではずっとA(1.0の指標が読める)だったんです』
眼科の病気になったこともないので、生まれて初めての眼科受診でした。
眼位(目の向き)は正常。
診察でも異常はありません。
眼科では、視力検査と同時に、屈折検査(機器)も行います。
データによって、近視・正視・遠視・乱視があるのか、どの程度なのかが分かります。
B君は軽度遠視が出ていました。
乳幼児の多くは軽度の遠視ですが、就学時の頃には正視(近視も遠視もない状態)になります。
軽度の遠視では問題はありませんが、強度の遠視では近くも遠くもぼやけて見えるようになり弱視になることが多々あります。
また、無理にピントを合わせようと調節すると両目が内向きになる内斜視を起こします。
小学校低学年までの子供は、調節力(ピント合わせ)が強いので、視力が良くても、遠視が隠れていることもあります。
また、視力が出にくく近視の値が出ても、実は近視ではない場合もあります。
子供では、調節を完全に取ることが出来ないため、調節を麻痺させる検査用目薬を使い、正しい値を把握します。
中学3年生だと、通常の屈折検査で十分です。
しかし、B君は『視力良好』『でも、近く見づらい』『軽度遠視』から、調節麻痺点眼を使い検査をしました。
すると…中等度の遠視が隠れていました。
これじゃあ、近くが見にくいわ~
B君は生来中等度から強度の遠視があったと推測されます。
3歳時健診以降、視力や眼位で異常が見つかることが多いのですが、B君はたまたま眼位異常もなく視力低下もなくスルーしてきてしまったのでした。
老眼と違って、調節力が十分あり、近くも見えるので、本人も周りも気にしていなかったようです。
中学3年生になり、勉強量も増えてきたあたりから、近くにずっとピントを合わせるのが辛くなってきたようです。
早速、遠視のメガネを処方することにしました。
後日、出来たメガネの確認にB君来院。
『すごく良く見えます。目も楽だし』
B君、良かったね。
お母さんも、『あれ?』と思い連れてきてくださって良かったです。
ぐっと、勉強しやすくなったはず。
受験、頑張って!
視力検査は、意義があります。
ただし、視力検査だけでは、分からないこともたくさんあります。
視力が良くても、例えば『本を読んだり細かい作業をすると集中できない・すぐ飽きる』場合、強い遠視が隠れていることもあります。
子供(未成年)は、自分からはあまり訴えないので、周囲が『あれ?』と思ったら受診をお勧めします。
一番楽な(目の)状態で、最大視力を出すアドバイスをするのが眼科医です。