2019.3.26 すぐ死ぬんだから
『すぐ死ぬんだから』
本屋で見かけた途端、即買いした本のタイトルです。
内館牧子さんの小説。
一気に読んで、先週また再読。
このタイトルを見た時、80歳過ぎの両親の口癖だと思いました。
『どうせ、すぐ死ぬんだから。どうせ、すぐお迎えが来るんだから』
娘(私)が、何か積極的なこと、革新・改革的なことを提案した時の決まり文句。
これが飛び出すと『じゃあ、無理だね。止めておこう』と応えるしかない娘。
主人公の78歳・ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。
だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。
「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。
ところが夫が倒れたことから、思いがけない人生の変転に巻き込まれていく…
というストーリー。
途中、女医が出てくるあたり、同職としては嬉しいです。
小説の始まりから、主人公は、自分が78歳にもかかわらず、痛快なほど、世の老人たちをこき下ろします。
途中途中のセリフも名言(だと思います)。
『年齢を忘れるのは本人じゃなくて、他人に忘れさせなきゃいけないの』
『年の取り方のうまい人に、外見がみすぼらしい人、いないでしょ』
『ナチュラルが好きという女どもは、何もしないことをナチュラルと言い、あるがままと言っている。偽装することを面倒くさがるだけの無精者だ』
『年齢相応が良いとする男女は大っ嫌いだ、小汚いジジババは衰退ではなく、老衰だ』
『帽子をかぶってリュックをしょって、渋団扇の如き肌をさらして、そこらにある服を着るバアサンになってはいけない』
『先のない年代に大切なのは、偽装。これのみ。磨きをかけて、だますことだ』
あとがきには…
『すぐ死ぬんだから』というセリフは高齢者にとっての免罪符である。
『すぐ死ぬんだから』と自分に手を掛けず、外見を放りっぱなしという生き方は『セルフネグレクト(自分で自分を放棄)』することなのではないかと。
夫が亡くなってしばらくハナは『すぐ死ぬんだから』を連発します。
その後、本調子に戻ったハナに、娘は『言う側はいいよ。だけど聞かされる側はたまんないよ。聞き苦しい、聞き苦しい』
主人公と同年代の方にとっては、大いに反論・批判もあるでしょうが…
豊かな老後を目指す院長としては、深く考えさせられる小説でした。
実現するかどうかは別として、早速、ライフプランを立ててみました。
おおまかですが、考え始めると、意外に楽しい。
自分の強みを生かして、社会にずっと関わって行けるよう、自分磨き(外見も中身も)は続きます。