2015.12.8 盲目の人々・最後に見たもの・海を見る
リニューアルオープンしたばかりの豊田市美術館。
『ソフィ・カル 最後のとき/最初のとき』の展覧会を観賞してきました。
『ソフィ・カル』は、53年生まれのフランスの現代美術家で写真と言葉を組み合わせた
作品で知られています。
生まれつき目の見えない人々に、「美のイメージとは何か」と問いかける『盲目の人々』
人生の途中で視力を失った人々にインタビューした『最後に見たもの』
生まれて初めて海を見る人々の表情をとらえた映像作品『海を見る』
視覚に関するこの作品展は、どうしても見ておきたい!と、
久々に美術館に足を踏み入れました。
『盲目の人々』『最後に見たもの』いずれも、当事者の肖像写真と、語り、
そしてそれをイメージする写真(決して盲の当事者には見えない)から
構成されています。
『盲目の人々』が見たこともない『美』のイメージは、海だったり、
青いという語だったり、魚だったり、オオヤマネコの毛皮だったり、白い杖だったり…
その中のひとりは「’青い’という語は、ただ口にしてみるだけでも、美しいものです」
(今回とても気に入ったフレーズです)
生まれつき盲目でありながら、視覚以外の感覚と想像力によって確固たる『美』
があることに驚きました。
一方『最後に見たもの』は中途失明(それも多くは突然に)の人々が答えたもの。
生来盲目の人々と違って、失明の原因は、病気だったり、
事故(交通事故、銃が貫通など)だったり。
最後に見たものは、大多数が失明の原因に関連する人・もの・景色で、
やるせなさを誘いました。
『美』シリーズからは「希望」が伝わってきたのに対し、『最後の見たもの』では
「無念」が伝わってきました。
盲目の人々の肖像写真の目の状態やエピソードから、病気や外傷の原因や程度を
想像してしまったのは、眼科医ならではの性かも。
見えない人と向かい合い、作品を完成させる。
ソフィ・カルの作品は、どれも真っ向から向き合い、
見る者を強く揺さぶるものばかりでした。