2015.6.2 目の見えない人は…

「目の見えない人は世界をどう見ているか」(伊藤亜紗著)を読みました。

「全盲の僕が弁護士になった理由」のように著者自身が視覚障害者である本ではなく、晴眼者の著者が、視覚障害者4人を通して、視覚障害者のもののとらえ方を考察していくというもの。

見える人が目をつぶることと、そもそも見えないこととはどう違うのか。

4本脚の椅子から1本引くと椅子は傾いてしまうけれども、脚の配置を換えれば3本脚で立っている椅子もある例えを出し、脚が1本ないという「欠如」ではなく、3本が作る「全体」を感じることだと述べています。

「障害者とは、健常者の使っているものを使わず、健常者が使っていない者を使っている人」だと。

さらに興味深い例が挙げられています。

空間認識についてです。

「富士山」と聞いたら、どんな富士山が浮かび上がるか?

きっと、ほとんどの人が新幹線から見るような、銭湯で見るような「末広がりの八の字」をイメージするでしょうが、視覚障害者の話によれば、飛行機から眺めるような「上が欠けた三角形」としてイメージしているそうです。

見える人にとって平面的にとらえているものが、視覚障害者にとっては立体的にとらえられているのです。

他に、月のイメージ。大阪万博会場の太陽の塔の顔の数など。

 

空間認識だけでなく、感覚・運動・言葉についても、健常者との違いが述べてあります。

 

見える人と見えない人のあいだに差異はあっても優劣はないはずですが、現実には見えない人はどうやって見える人と同じように生活していくことが出来るかということが福祉的な関心です。

見えないから困っていることばかりではなく、見えないからこその認識、感覚があることを知ると「そっちの見える世界も面白いねぇ!」ということになるのでしょう。

 

晴眼者の常識(しかも、それは偏見かもしれない)とは違う「見えない人の世界」を少しは知り、考えることのできるお勧めの本です。

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること
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