2024.6.18  目薬の温泉

『え~!?』

思わず声を上げたのは、目の温泉・眼病に直接効く温泉を見つけたから。

目の神様を拝むべく、全国を行脚中?の院長ですが、温泉があるとは!

 

鎌倉時代より700年の歴史。

目の温泉として伝わる神秘の源泉。

 

上杉謙信好公の隠れ湯として。

江戸時代からは『目の温泉』として遠路より数多き人々が訪れる地。

 

白内障・眼底出血・ドライアイ・眼精疲労などなどに効能があるそう。

 

上信越高原国立公園に位置する貝掛温泉です。

 

見つけたからには、眼科医としては(?)行くしかない!?

 

新潟県の越後湯沢が最寄り駅です。

といっても、ここからが遠い。

バスは1~2時間に1本しかありません(しかも国道沿いにバス停)。

タクシーでぐんぐん山道を上り、国道を外れると、車一台やっとの道に入り温泉に着きます。

 

いかにも秘湯というたたずまい(日本秘湯を守る会)。

建物も古めかしく、しかし清掃が行き届いています。

 

 

お風呂場に行く長い廊下を歩いて行くと…

著名人の色紙。

ゲゲゲの鬼太郎がお風呂に浸かっているフィギュア。

お薬師様の祭壇。

そして、某老舗眼科病院の3代前院長寄贈の眼球断面図も。

シュレム氏管とかチン氏体とかの表記も。

眼球の構造や機能の詳細は、この30年くらいで大きく進歩し解明されてきました。

が、既に遥か昔(院長生まれていない時代)に、専門用語があったことを知ると、先達たちへの畏敬の念に打たれます。

 

気分が高まったところで?入湯です。

 

『正しい目の洗い方

1.手で湯をすくい、目を大きく開き、湯に浸します

2.少し慣れたところで、まぶたを閉じて開いて繰り返し、約1~2分がおススメ』

 

湯口から温泉が出ています。

そのお湯をすくって目を洗うと効能があるらしいのですが…

 

眼科医の院長、目は洗わず、静かに温泉を楽しみました。

他にも、神経痛・腰痛・冷え性・五十肩・病後回復に効能があるそうなので(院長該当しないが)、精神の安寧には効果がありました。

木々に囲まれた静寂な温泉に浸かって『幸せ~』

 

昔(院長生まれる前)は、抗生物質の点眼がなかったため、眼科医でさえ結膜炎の場合、ホウ酸水で目を洗うしか治療がありませんでした。

無色透明で無臭の貝掛の湯はメタホウ酸を多く含み、目薬の湯そのもの。

50年以上前でさえ、目を洗うことが治療とされていたなら、江戸時代はなお、目の温泉の効能は絶大だったと思われます。

 

湯上りに、売店を覗くと

『目薬はないの?』と別のお客さん。

『以前は売ってたんですけどね~今は取り扱ってないです』

院長も気になっていました。

明治時代には、販売許可を得て目薬を販売していたそうです。

ホウ酸で洗う(もしくは点す)ことが、唯一眼病治療だったことが偲ばれます。

 

現在では、多種の抗生物質点眼を処方することが出来ます。

点眼回数だけ守れば、洗眼しなくても治ります。

 

また、目を水(湯)で洗うことは、涙液層のバランスが崩れるので、良くないということもわかりました。

眼科医も、『プールの後は水道水でよく目を洗いましょう』から『人口涙液を数滴さす方がよい』『洗眼をまめにすることは良くない』などと言うようになりました。

涙の成分もわかってきたので、水ではなく、涙と同成分の人口涙液を勧めています。

 

目の温泉に入りながら、変わらないもの(温質)と変わるもの(眼病治癒)を考えます。

眼科医になってからのわずか30年余でも、眼科学は大いに進歩変化。

でもご利益を求め入湯する気持ちは変わりません。

感謝。

 

こちらもご覧ください

2022.10.25 目の日に目洗い

 

カテゴリー:健康 公センセの日常の出来事 眼に関すること

2024.6.11  運転止める?続ける?

眼科の学会も規模の大きなものから小さいものまで。

森(眼科全体)に対してか、木(病気から・症状から・検査から・治療から…など)に対しての学会か。

今回は視野画像学会。

以前は視野学会だったのですが、眼科の画像機器の進化は著しく、視野画像学会と名称が変わりました。

 

開催地は新潟。

2回目の新潟です。

初めての新潟は、研修医一年目、初めて学会参加でした。

初学会参加に緊張と興奮。

でも、講演内容はほとんど理解出ず。

同期と『よくわからなかったね~』(研修医あるある)

上司I先生(女性)が登壇されたのを『かっこいい~すごい~』と眺めていただけ。

あっと言う間に学会が終わり即帰路に。

何が何だか?学会って異次元?

 

さて2回目の新潟は…

 

今回聞きたかったセッション、座長はI先生。

あの頃30代で登壇されたのですが、今もずっとパワフルでお元気、緑内障や視野の世界では重鎮です。

テーマは『視野と運転』

 

日本視野学会には「交通と視野委員会」があり、運転免許と視野についても調査研究が行われています。

現在、免許更新には規定の「視力」は必要ですが、視力が適すれば視野異常については触れていません。

しかし診察していると、視力が出ていても視野欠損・視野狭窄の患者さんは多くいます。

 

高齢者の運転が問題になっています。

運転は、認知・判断・操作からなります。

認知の中には視野障害も含まれています。

信号が見にくい・夜間見にくい・雨天に見にくいなどは、加齢に伴い自覚が増えますが、それでも高齢者で自覚しているのは4割と報告されています。

視野異常がある場合も同様で、自覚のない人が多いです。

高齢&視野障害ありは要注意です。

 

視線(眼球運動)のばらつきは、視野の広がりと連動しています。

視線のばらつきが小さいと事故を起こしやすく、大きいと事故を起こしにくいとされています。

視線のばらつきが小さいということは、注意力が低下しているということです。

高齢者では小さくなり、若い人では大きい傾向があります。

DS(ドライビングシュミレーター(模造運転装置))では、年齢が上がるにつれ、視線の水平方向のばらつきが小さくなったと報告されています。

速度によっても、視野の動きは小さくなります(より速度が上がると視野が狭くなる)。

またDS上で緑内障患者さんを対象に検証したところ、交通事故(仮想)の直前の視線の動きは小さくなり、さらに垂直方向の低下が著しいことがわかりました。

上方で信号を見、前方水平上に車や人を見、下方で計器を見ることを絶えず繰り返して運転しているのですが、どこかで少し視線が停留した時に事故が起こっています。

 

注意が向く箇所が多いということは、視線が大きいということ。

 

DSの目的は、自分の運転を模擬体験し、どこにリスクがあるかを自覚してもらうことです。

自身の視野異常を理解し、眼科医の助言の元に、注意して運転することで事故を起こさないようにする。

もしくは、視野異常を理解した上で、運転を止める自己決断をする。

 

DSおよび運転外来は、全国で2施設しかありませんが、私たち眼科医も運転が気になる患者さんには助言をしています。

 

2シーターのマニュアル車を運転していた(若かりし頃)院長も、運転技術の低下・視線のばらつき低下を感じるこの頃。

運転は最低限に。

公共交通機関&ママチャリ大いに活用しています。

 

運転が気になると思う方は、ご相談ください。

 

 

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2024.5.28   3 分だけど…

眼科医にとって近視はとても身近です。

近視と一口に言っても、乳幼児から高齢者まで。

緑内障や白内障、網膜の病気や斜視など。

年齢も病気も多岐にわたり近視と深く関係しています。

近視を軸として、眼科の病気を考えるのが近視学会。

 

土曜日の午後の講演に間に合いたい。

診療延長とその後の事務掃除などの時間を予想。

東京駅から会場までの距離と時間。

それらを勘案して指定券を購入。

 

当日、スタッフ全員巻いて巻いて何とか予定の新幹線に乗れました。

新専門医制度になってから、単位の取得は、毎回講演10分後に締め切られます。

当初の計算で行くと、ぎりぎり開始10分後に単位申請出来る見立てでした。

 

さて、今回は小さな会場。

学会参加の受付をして同じフロアの講演会場に行く予定。

受付でQRコード提示するも『パスワードは?』

『え~!?覚えてない。うちのPCにあるはずだけど…』

焦るも進みません。

会場スタッフが『名前からお調べします』と言ってくれ難を乗り切った院長。

大急ぎで会場に行くも、単位申請読み取り機がありません。

『3分前に締め切っちゃたんですよ』

ガーン…仕事巻き巻きで来たのに…

単位は取らなくても聴くことは出来ます。

恐らく今回取らなくても、更新に支障ない単位数を取得できているはず。

それにしても…3分の見込み違いにショック!を隠し切れない院長でした。

 

さて、今回の学会も、本当に勉強になりました。

 

最近当院でも力を入れているオルソケラトロジーについて…

軽度近視群では、オルソケラトロジーと低濃度アトロピンの併用は、単独群より大きく近視抑制効果があることが実証されました。

ただ中等度以降は併用効果がないので、きちんと見極めることは必要です。

また、アトロピンの濃度は0.01%が主流でしたが、0.025%で更に近視抑制効果があることが実証されています。

研究では、0.05%が最も抑制効果がありましたが、止めてからのリバウンドも大きい(進行が速くなる)と報告されています。

現在日本で使用できる点眼濃度は0.01%と0.025%。

当院でも、早速0.025%アトロピンを導入する予定です。

 

強度近視は、一般的にはオルソケラトロジーの対象ではありませんが、強度近視にオルソケラトロジーをして弱めの近視にし眼鏡を装用しても、眼軸長(目の奥行)の伸びが抑制されたという報告も。

これは、乱視の場合の報告もあったので、今後オルソケラトロジーの適応が広がるかもしれません。

また、片方だけ近視が強い場合も、近視の強い方にオルソケラトロジーをすることで眼軸長の伸びが抑制されたという報告も。

 

年齢が若いほど、近視進行は早いです。

6~8歳が急激に進行(眼軸長が伸びる)するので、この時期にオルソケラトロジーを始めるのがベストです。

もちろん、どの年齢で始めても眼軸長の伸びの抑制効果はありますが(中学生くらいまで)。

 

双子研究も興味深かったです。

ひとりに眼鏡、もうひとりにオルソケラトロジーをすると、両者の眼軸長の伸びに2倍の差(眼>>オルソ)が生じたとのこと。

 

その他にも、サギングアイ症候群・後天性内斜視・緑内障・白内障との関連講演をたくさん聞いてきました。

これも折を見て発信していきたいと思います。

 

今回はタイトなスケジュールのため、徒歩圏内の日本橋デパート(初)のみ。

ざーっと歴史的な建物を楽しんだだけですが。

デパ地下のお惣菜を新幹線のテーブルに並べて日本橋?を味わいました。

ひとり、乾杯!

 

 

 

カテゴリー:眼に関すること

2024.5.14  校医のトリセツ

今年も眼科学校医担当4校の学校検診が始まりました。

 

名古屋市では8年前から任意で色覚検査が復活しました。

院長が小学生の頃は全員が受けたはず。

色覚検査が任意になってから数年は、各学年で希望者がありましたが、最近はほとんど1年生です。

50代院長~40代スタッフ小学生時代は4年生で実施されたのですが。

 

早期発見早期治療の波…?

(ちなみに色覚異常においては、治療はありません。後天性を除き結果は一生変わりません)

 

学校検診では、石原表を使って検査をします。

本に書かれた数字を読んだり、輪の切れ目を探す検査です。

あるかないかを調べます。

 

ただし…

1年生のせいか、こちらの言うことが理解できないことがある(2桁の数字の場合1桁のみ言うなど)

数字をまだしっかり読めない子がいる。

などでエラーが出てしまう可能性もあります。

もちろん、はきはきと答える子も多くいます。

誤答であれば、眼科受診のお勧め用紙を渡すことになります。

 

眼科での再検査にて、色覚異常と診断された場合、

 

一般的に多いのは『先天赤緑色覚異常』です。

日本人男性の20人に1人、女性は500人に1人の割合です。

女性は、発症していなくても色覚異常の遺伝子を持っている保因者もいます。

割合で言うと、緑内障も40歳以上で約20人に1人なので、ありふれていると言えなくもないです。

 

このタイプの見え方の特徴としては…

例えば、赤と緑がどちらも茶色っぽい同系色に見えます。

 

治療法はありませんが、眼科医として、生活しやすさの助言をすることは出来ます。

色の区別がしにくい組み合わせを自覚すること(眼科で苦手な組み合わせの色パターンを確認)。

視覚だけでなく、他の感覚も使って確認すること。

職業制限(警察官、消防官、自衛官、パイロットなど、交通・運輸関係の列車・飛行機・船の操縦士など)はあること。

デザイナーや染色業など色の繊細さが必要とされる職業は難しいかもしれないこと。

などなど。

 

色覚異常とは、最近では色の特性(色の見え方の個性)とも言います。

そのため、自分の見え方の特性と必要な配慮・まだある制限を知っておけば大きな問題は生じないことを、当事者や保護者にお話しします。

 

担当学校は全てマンモス校。

校医としては、スムーズに検診を行いたいものです。

 

円滑な検診のためには、養護教諭の協力が必須。

そのために学校によっては『校医・公センセのトリセツ』があるらしい…

検診の仕方で気になることや改善点、学校保健委員会での提言などを受け止めての『公センセのトリセツ』(マル秘)。

 

名前を呼ばれたら返事をする(今どき返事をしない子もいます…)→検診する側からは相手を確認することは前提条件。

起立で臨む(ふにゃふにゃ立ちや、ポケットに手を突っ込んだままの子も)→眼位はまっすぐで見るのが前提。しっかり立たないと、目を触っているときに転倒の恐れもあります。

眼鏡は外す(このアナウンスを聞いていない)→瞼を下げて目の病気を見るので、スムーズな検診をするために必要。

などなど、公センセの要望が生徒全員に周知されるよう、学校全体で取り組んでくださっています。

 

養護の先生オリジナルの『公センセのトリセツ』のお陰で、円滑に検診が出来ます。

『トリセツ』の存在を知って尚、養護の先生に感謝です。

 

こちらもご覧ください

2020.11.24 加齢と色覚

2019. 7.30 見えるのに見えない

2017. 5.30 2017学校検診

2016. 3.22 学校検診変更

2015. 7.21 色覚検査見直し

2012.11.27 色も変化する

カテゴリー:健康 眼に関すること

2024.5.7  ホルスの目

目は永遠の興味・関心事。

生業としての医学的な勉強はもちろんですが、『目』に関する他の事・ものにも吸い寄せられます。

 

ある日知ったホルスの目。

ハヤブサの頭をしたエジプトの神ホルスの目をシンボル化したものだそう。

美濃焼のとても素敵なホルス神を知っています。

でも違う。

ホルスの目が気になります。

あ~気になる…

 

ピラミッドも一度見てみたい!

 

人生後半、思い切りでエジプト行き決行。

 

カイロ空港からの観光バスには、観光警察官が乗り込んできます。

エジプトは、過去に大きなテロ被害に遭っています。

テロを防ぎ観光客の安全を確保するために、警察官の添乗以外にも、道路・施設・ホテルなど検問続きでした。

警察官は、観光客のガード及びJapanese welcom(どのエジプト人も)で写真撮影までしてくれるサービスまで。

エジプトの観光に力を入れている様子がよくわかりました。

 

しかし観光バスの車窓から見るに、道路事情はハチャメチャという表現がぴったり。

ガイドさんが、『日本人は道路を渡ってはいけない』と注意したこともすぐ理解出来ました。

車線はあるのかないのか、3列4列無造作に走っている車は、隙があれば別車線(線は見えないが)に入り込みます。

その度にクラクション。

鳴らした者勝ちのようです。

走っている車は、みんな傷だらけ。

乗り合いバスは、扉を開けたまま走っています。

同じ道路に、バイクも馬車も自転車も走っています。

所によっては駱駝も!

その隙間を人が平気で渡っていきます。

自分から車に近づいて止まらせているようにも見えます。

信号や横断歩道は見当たりません。

交通ルールに慣れている日本人としてはヒヤヒヤ。

日本での一生分以上のクラクションをエジプト滞在中に浴びた院長でした。

 

喫煙率も約90%とのこと。

ストレス解消とはいえ、現在の日本ではその理屈は通らなくなっています(弊害を知っている)。

しかも、タバコ(ゴミも)のポイ捨ても目立ちます。

観光客のため・テロ対策のため警察官の配置はすごく多いのですが、インフラ整備も早急に…などと某異邦人の感想。

 

ピラミッドはもちろん一見の価値あり。

博物館のツタンカーメンのマスクなども素晴らしい!

人だけでなく哺乳類から爬虫類まで様々なミイラも。

想像をはるかに超える建築から科学(医学?)まで幅広い知識技術がどのように結集されたのか?

これを研究するのが考古学なのでしょうか?

考古学専攻のガイドさんの説明を一生懸命聞きながら、未だに謎も多くあることも知るのでした。

 

さて、探しに来たのはホルスの目。

エジプトでは、ホルスの目は『あなたのことを見ているよ』というお守りだそう。

古代エジプトで使用されたパピルスと同様の材料手法で作られたパピルス紙に描かれたホルスの目。

惹かれたのは、鮮やかなブルーと金で書かれた目。

しかも、結膜(白目)はほんのり充血しているように、血管に色が塗られています。

クリニックのお守りとしてはぴったり。

象形文字で『GANKA HASEGAWAKO』と入れてくれました。

(実際にはGANKAHASE GAWAKOになっていました。レイアウトを考えてのことらしい…)

 

患者さんの眼病平癒と院長の眼科医の腕が上がりますように。

エジプトまで行って神頼みです。

 

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カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2024.4.23 学会と祈願

新型コロナ以来、学会は現地参加とオンデマンド。

春の日本眼科学会総会と秋の日本臨床眼科学会では、更にライブ視聴も。

 

さて、今年の眼科学会総会。

印象的な事柄をいくつか(アウトプット)

 

以前は、近視は成人になれば進行しないと言われていました。

しかし、強度近視は生涯にわたり進行することが分かってきました。

裸眼視力回復のためにICL(眼内コンタクトレンズ)をしても進行することが報告されています。

 

近視は、眼鏡で矯正すればよいというものではなく、進行により近視性黄斑症(物を見る中心が悪くなる)、緑内障、網膜剥離そして視覚障害の要因となります。

近年、日本人は強度近視が増加しています。

 

そのために、こどもの健やかな目の成長をサポートする目的で、日本眼科医会では6月10日を『子供の目の日』と制定。

6歳までに視力1.0(矯正でもOK)を目指します。

弱視の早期発見・治療や低年齢化する近視発症の予防・啓発は、眼科医・眼科学校医(院長も地元4校担当)のミッションです。

 

若年のスマホ斜視も話題ですが、高齢者の斜視も増えています。

主なものは、サギングアイ症候群です。

コラーゲン組織で出来ている眼球を支える靱帯が、加齢により弱くなり、眼球をしっかり支えられないために眼球の位置がずれ斜視が起こります。

成人斜視の原因の1位で、年齢とともに増加します。

手術を選択したほうがよい場合もあります。

 

などなど。

後日オンデマンドでも視聴する予定です。

 

今回会場は東京。

目と鼻の先(ほどではないが)、今まで何で知らなかった?という目の神様へ。

後楽園駅で降り、少し住宅街のようなところを歩くと…

源覚寺、通称こんにゃく閻魔です。

門の石柱には、赤字で『こんにゃくゑんま』

こじんまりした境内です。

参拝客一人のみ。

 

お参りする先には、怖そうな閻魔様が。

右眼は開いておらず(盲目)、左眼をかっと見開いてこちらを見ておられます。

 

目の神様(閻魔様)の由来は…

宝暦(1751~1764)頃、眼病を患う老婆が、好物のこんにゃくを絶って一心に祈願した。

夢の中に大王が現れ『満願成就の暁には、両目のひとつを差し上げよう』と。

願掛け満願成就、老婆の目は治り、以来大王の右眼は盲目になった。

老婆は感謝のしるしとして、好物のこんにゃくを絶ち供え続けたとのこと。

 

お供えのこんにゃくが山積みされています。

こんにゃくを持ってこればよかった…(名古屋から?)

いつものように祈願。

 

敷地には普通のお墓に加えて樹木葬も。

都会らしいというか…

 

こんにゃく閻魔様は、夏目漱石の『こころ』にも登場します。

何十年ぶりかに再読。

こんにゃく閻魔は、ほんの一文の登場でしたが、再読して思うところ多し。

先生(登場人物)は、随分若かったのね~

人生序章の自分が読んだ『こころ』と人生折り返した自分が読んだ『こころ』

ストーリーにも登場人物への思いにもずいぶん変化が。

自身の人生の分、考えながら読むことが出来ました。

名作が時を経て愛読されていく理由を再確認。

再読の機会を与えてくれたこんにゃく閻魔様のお陰です。

 

いつもお守りをいただくのですが、今回はインパクト抜群の絵馬を。

『最近は、その場で書かずに持って帰る人も多いですよ』

その言葉に安心して?持ち帰ります。

 

最新の学会に参加し、古の老婆(自身もその時代なら老婆です)のように祈願する院長です。

 

*4月30日公センセの部屋はお休みです。

 

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カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2024.4.9   目を見て頭が分かる?

患者Aさんが夕方来院。

めまいのお話から始まりました。

めまいから眼科?

よくよく聞くと、数か月前からめまいがあり耳鼻科に受診。

めまいのお薬をもらっているとのこと。

めまいは相変わらずだけれど、本日PC使用中一瞬見えなくなった。

これは眼科も関係しているかも?と受診。

よくよく話を聞き、まとめると…

耳鼻科受診の前に頭痛が発症。

内科受診。

鎮痛剤を処方してもらい、少し良くなったり、再発したり。

そのうち、めまいや吐き気も起こるようになり耳鼻科に。

お薬を処方してもらい、少し良くなったり再発したり…

様子を見ていたところ、本日目の症状が出現。

 

視力は両眼ともよく出ています。

眼圧も異常なし。

診察に入ります。

瞳孔異常や眼球運動異常はありません。

顕微鏡検査をします。

眼球の前方は全然問題ありません。

眼球の奥を見ます。

『あれ!?』(ここで診断はほぼ確定です)

 

視野検査と眼底写真撮影をします。

 

診断は

『うっ血乳頭(にゅうとう)』です。

脳から眼球に入る視神経の一番太いところ(乳頭)に、頭蓋内圧(脳の圧)がかかって、浮腫(腫れ)を起こしている状態です。

視神経は通常境界がはっきりしていて、ややオレンジ色をしています。

緑内障などで視神経が悪くなると、色も黄色~白っぽくなります。

逆に、うっ血乳頭の場合は、境界がなく赤っぽくなります。

 

うっ血乳頭の症状は、頭痛・吐き気・めまい・一過性の視力低下など。

脳圧が上がることで、症状を起こします。

 

検査結果が揃ったところで、Aさんに説明します。

原因は脳にあること。

脳の圧が高くなっている原因としては、脳腫瘍が最も多く、ほかに脳出血や水頭症が考えられること。

だから、脳外科に紹介状を書くので今すぐ行ってください。

 

夕方でしたが、緊急で脳外科受診をしてもらいました。

 

翌日返信が来ました。

悪性脳腫瘍を疑い、手術前提で緊急入院となったとのこと。

 

やはり…

たぶん…とは思っていたものの…

Aさん頑張って!

あとは脳外科の先生にお任せするしかありません!

 

眼球は脳から繋がっているにも関わらず、普段は命に関係ない目の病気がほとんどです。

見える・見えないは眼科医にとっても患者さんにとっても大きなことです。

しかし、それ以上に生きる・死ぬは、医師・患者さんともに大きなことです。

眼科医だから目しか見ない(通常は目だけで完結しますが)のではなく、眼科以外の勉強が今も役に立つときがあります。

科によっては古い知識しかありませんが、機会を見つけて上書き保存です。

うっ血乳頭から脳腫瘍がわかったAさんの例も、開業してからは初です。

滅多にない病気も、自分の引き出しに知識や記憶があってこそ患者さんに還元できます。

 

開業して、脳外科につなげた患者さんは、『脳動脈瘤』『脳梗塞』そして今回の『脳腫瘍』

いずれも、脳の病気と思わずに眼科受診され、診察検査結果から脳外科に紹介、緊急入院となった例。

眼科医も命を救うことがあるのです。

 

 

数か月後、ひょっこりAさん来院。

『帽子被ったままですみません』と前置き。

結果はやはり悪性だったとのこと。

取り切れるだけの腫瘍切除をし、放射線・化学治療をし、入院生活は数か月に及んだとのこと。

 

『ありがとうございます。助かって良かったです』

 

『頑張られましたね』

 

こうして色々な症例を経験し、患者さんから勉強させてもらっている院長です。

まだまだ精進中。

目の神様も背中を押してくださいます。

 

こちらもご覧ください。

2018.1.23 右目が見えない

 

 

カテゴリー:クリニックに関すること 眼に関すること

2024.3.26 エコバッグあれこれ

地球環境に優しく!

SDGsが叫ばれる昨今、院長は我が家の誰よりも意識しているつもり。

エコバッグ然り。

 

なのに、エコバッグにまつわるアクシデントも。

 

産業医の仕事帰り、デパ地下の総菜売り場で夕飯を買った時のこと。

夕方で混んでいたので、あたふたとお弁当を受け取ってエコバッグに入れ、財布もついエコバッグに入れたらしく…

家に帰ってから財布がないことに気づき真っ青。

落とした場所は、あの総菜売り場しかない…

半ばあきらめつつ問い合わせてみると…幸いなことに、後ろのお客さんが気付いて届けてくださったとのこと。

取りに行く以外に用もない(返却が用ではあるが)のに再びデパートへ。

レジ袋お値段以上の運賃と時間の出費。

 

先日は、地下鉄を降り所用に向かう途中、ハンドバッグしか持っていないことに気づき、戻って駅長室へ。

エコバッグも乗車時は持っていたはず。

電車は車庫に行ってしまい確認には時間がかかるとのことで、所用と買い物を済ませることに。

古い物なら問い合わせしなかったのですが、『わざわざ買った新品』のエコバッグ。

未使用で失くすのは…

その日は、買い物をする度に、数円から20円のレジ袋や紙袋を買うことになりました。

ただし、その場合、きちんとサイズに合うものを選んで入れてもらえるので、総菜が傾かないか?飛び出ないか?などの心配は不要。

お弁当を買う時に限って、底の広いエコバッグを携帯していないことは結構あります。

帰りに、再び駅で尋ねると、該当バッグは見つかったけれど、終点駅に取り置いてあるそう。

取りに行く以外に用もない(返却が用ではあるが)のに地下鉄終点駅まで。

レジ袋お値段以上の運賃と時間の出費、再び。

 

帰宅して、我が家(というか個人の)エコバッグを数えてみました。

レジ袋廃止・エコバッグ推奨により買ったもの・もらったものを数えてみると17個!

レジカゴサイズバッグ2

ナイロン製の丈夫なバッグ3

保冷付きのバッグ3

コットントートバッグ5

お弁当などに対応の底広バッグ1

小さく丸められるバッグ3

どんだけ~!?

 

エコバッグ推進当初は、エコバッグ特集などがあり、おしゃれ!実用的!限定!のフレーズにやられた院長(だけでないはず)。

普通のレジ袋だと何とも思わないのに、エコバッグだとセンスが見え隠れするように(持ち主の嗜好とか)。

捨て時も難しく、飽きてきても使い続けたり、もったいなくて新品が使えなかったり…

小さく畳められても、ハンドバッグの中ではかさばります。

しかも、レジ袋廃止のため、個室のゴミ箱にかけるビニール袋を買うことも。

 

なんだかな~

 

独立した息子たち3人に聞いてみると

スーパーはエコバッグかスーパーレジ袋使いまわし(2:1)。

コンビニなど出先では、袋を有料で買うか手に持てるだけしか買わない(2:1)。

 

レジ袋より見栄えが良いエコバッグですが、何回使えば元が取れるのか?

それより、そもそも全部使いきれないような大量のエコバッグを持っている状況は環境に優しいの?

 

自身のエコバッグは黒系の内生地が多いので、入れる物によっては中を確認しにくいです。

しかも加齢に伴いコントラスト感度は低下します(院長大いに自覚)。

 

レジ袋の使いまわしが一番エコに思えてきました。

ものを持たないように気を付けているつもりでしたが、エコバッグお大尽(だいじん)の自分にびっくり。

 

エコバッグも断捨離?それこそエコに反している?

自問自答する院長です。

 

詳しくはこちらもご覧ください

2022.6.14 暗いところで

2020.9.29 色・明るさと交通事故

 

カテゴリー:公センセの日常の出来事 眼に関すること

2024.3.19   念ずれば見える!?

伝統工芸品が気になる院長です。

子どもが社会科で習い、たまたま伝統工芸品の展示会に出かけときのこと。

『塗りは一生もの』その言葉と、干支の絵と名前を描いてもらえると聞き、思い切って家族分のお椀を揃えました。

子育て中は毎朝使用していましたが、食洗機導入でいつの間にかお蔵入りに。

数年前、ふと思い出して取り出してみると、随分使用したせいか、塗りは剝げ絵文字も薄れています。

『塗りは一生もの』の言葉は思い出しましたが、何塗りなのかは思い出せません。

アナログ人間の院長は、早速漆器に関する本を購入しました。

全国各地には、様々な漆塗りの産地があり、それぞれ特徴があります。

思わぬことで購入した本ですが、漆器についての知識が深まりました(これをきっかけに漆器巡りの旅が始まります)。

本にある漆器の特徴と、目の前のお椀と、自身の記憶と…あたりを付けて、数か所の漆器組合に問い合わせてみました。

 

待つこと数週間。

なんと、そのうちの一か所が該当漆器を扱っていたと判明。

正解が見つかり嬉しさもひとしお。

ただし、塗り直しは新品とほぼ同様の価格になるとのこと。

新品を注文しました。

しかも絵文字を描いた職人さんはまだ現役で、もう一度描いてもらえるとのこと。

 

ピカピカの艶のあるお椀が届きました。

食洗機に慣れてしまっていますが、このお椀は手洗いし大切に使っています。

丁寧に扱う…やっとその余裕も出てきました。

 

さて漆器は、蒔絵や沈金・螺鈿という加飾があると更に値打ちが上がります。

先日、デパートでの伝統工芸展。

いつものように、漆器をメインに見て回ります。

一角に某地方の蒔絵展示が。

棗(なつめ)や文箱など、およそ自分には縁がない物ばかり。

繊細な品だけにため息がつくようなお値段。

『ゆっくり見ていってください』とご主人。

お客が一人なのもあって、ショーケースから色々取り出して見せてくださいます。

ふたの裏には、更に素晴らしい蒔絵が。

作品の説明を聞きながらも、お見受けするにかなりの御高齢。

『失礼ですが、おいくつですか?』

『来年90歳です』

この道70年の軌跡を話してくださいます。

 

50歳頃、左眼の眼底出血を起こし、更に右眼も眼底出血を起こしたそう。

『見えなくなってしまって。先生にもレーザーするけど、だめかもしれんて言われて。でも、廃業するのはどうしても出来んと思って、見えないけれど毎日描いていた。

他のものは見えないのに、不思議と蒔絵を描くときはだんだんと見えるようになって。お陰様で、こうして続けさせてもらっています』

 

眼底出血は網膜の血管が切れて起こります。

恐らく左の網膜静脈分枝閉塞症(網膜の太い静脈の一部が切れる)により、黄斑(物を見る中心)は浮腫(むくみ)が起こったと考えられます。

40年くらい前の治療はレーザーが主流(今は硝子体注射)でした。

網膜分枝閉塞症は一般には片眼発症なので、両眼は稀。

恐らく両眼とも黄斑浮腫が上手く引いて視力が回復したと思われます。

 

蒔絵の話から、なぜか目の話になってしまいました。

 

信念が病気を治す一助になる事はあります。

(科学者(医師)でありながら、目の神様を拝む院長)

 

『あんたもまだまだ若いから頑張りなさいね』

棗や文箱には手が届かないので、小さなスプーンをひとつ購入。

先っぽに手書きで熊さんが描いてあります。

 

その後、あちこちで漆器の作品を見る中で、あのご主人の作品がよく陳列されていることに気づきました。

実はとてもご高名。

 

くまさんスプーンも大切に使います。

 

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2024.3.12  ガクチカにも!?

今年もフロアーバレー大会がやってきました。

名古屋ウイメンズマラソンと同日。

会場の愛知県体育館への沿道は、応援の人で賑わっていました。

院長も、かつてその沿道を走った一人。

名古屋城から北に向かっては30キロ地点を通過するので、足が重くなりやすい。

緩やかな勾配なのにきつく感じます。

そんなランナーだった頃を思い出しつつ、体育館内へ。

 

第30回全日本選抜フロアバレーボール愛知大会 ANGEL CUP2024が正式名称。

大会目的:

・全国を代表する強豪チームと各地域を代表するチームが理想的な会場で集う

・真の王者を決定すると同時に視覚障害者の体力の向上と自立・高いQOLの実現を目指す

・各地域のレベルアップと交流

・審判員指導者の育成を図る

 

『なんかすごいですね~』

応援に来てくれた当院スタッフ。

 

フロアバレーは6人制バレーです。

前衛はアイシェード(目隠し)をして臨みます。

健常者も視覚障害者も同条件となります。

一般のバレーボールみたいに、前衛はネット際を守り攻めます。

見えないので、バラバラに動くことはなく、後衛の指示により動きます。

守りの時は、後衛からの声掛けの元、一斉に動きます。

 

後衛は、視覚障害等級の軽い人や晴眼者が担当します。

遠くからのボールのトスやアタック、前衛の動きへの指示など、的確な動きと指示が求められます。

 

当クラブではメンバー10名のうち、前衛担当5名・後衛担当5名です。

 

試合はほぼ(というのは院長も勉強不足で正確に理解していません)一般のバレーに準じていますが、ネットの下でボールのやり取りをします。。

ネットタッチとか、ボールダブルタッチとか、ボールに触っている時間とか、審判員はしっかり見ています。

院長はチームドクターの権限?で試合を間近で見ながら応援するのみです。

(応援に来てくれたスタッフたちは観客席で)

 

キャプテンAさんの力強いボールは健在。

マネージャーBさんがムードメーカーです。

健常者メンズも頑張っています。

昨年からスタメンに昇格した兄弟も、昨年よりずっと動きがよくなっています。

新メンバーのCさんが、50代とは思えないフットワークで動き、前衛の彼らに指示を出しています。

Cさんは名古屋に転居でチーム入り。

小学生の頃からフロアバレーに親しんでいたそうで、その道何十年のベテラン。

視覚障害は軽度ですが、バレーの動きに障害を感じさせません。

それでも病気や日常の不自由さについて話してくれました。

 

晴眼者以外は全員が何らかの目の病気を持っています。

病気の病態は、眼科医である院長はしっかり頭に入っているつもりです。

しかし、当事者の見え方(の変動)や感じ方(痛みなど)は、話を聞いてみて初めて知るところとなります。

病気が一種類だけでなく、複数の病気(角膜・網膜・視神経などなど)を合併している場合もあります。

当事者の話を聞くことが、眼科医として大変勉強になります。

 

試合は接戦でしたが、今回は良い結果とはなりませんでした。

それでもGOOD JOB! です。

 

来年に向かってもう練習計画が出ています。

 

晴眼者のメンバーには大学生もいます。

ガクチカ(学生時代に力をいれたこと)になること請け合いです。

興味ある方歓迎です。

チームドクターより広報の院長です。

こちらもご覧ください

2023.1.31 白い杖の来客

2023.2.14 とっさの一言

2023.3.7 残りを活かす

2023.5.16  チームドクターは広報でもある

2024.2.6  スポーツでいい感じ~

 

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