2022.4.26  腫れた!も色々

先々週の休診日は、学会参加で1週間仕事。

先週は学校検診でまたまた1週間仕事。

開業医は自院での診療以外にも、イレギュラーな仕事が多々あります。

 

休日診療所の出務もそのひとつ。

最近は、医師会に入会せず開業する医師もありますが、医師会の役割として公的な地域医療への貢献があります。

名古屋市では、各区に休日診療所がありますが、内科以外に、より専門的な小児科・外科・耳鼻科・眼科は市の医師会館にのみ設置されています。

休日急病診療所は、あくまでも応急の診療なので、翌日近医に繋ぐまでの、お薬処方も原則1日分ということになっています。

 

久しぶりの出務。

市医師会館は都心にあるのですが、ふだん、講習や休日診療所の出務以外行かないエリアです。

都心だけあって、地下鉄を降りて職場に向かう途中、お店が変わっていたり、マンションが建っていたり…きょろきょろして退屈しません。

いつも早めに到着するように出るので、裏道の道草?も楽しみます。

 

今までと違うのは、入り口に発熱外来が設置されていること。

ガウンを着た看護師さんに頭を下げ、検温をして、眼科外来へ向かいます。

 

診察前には、細隙灯顕微鏡や倒像鏡(いずれも眼科の診療機器の基本)の操作の確認。

自身のクリニックのは、自分のお気に入りの最新・一流品(これだけ自慢させて~)で性能も使い勝手も良いのですが、休日診療所のは旧式・メーカーも違うので、慣れておきます。

今回は、どんな患者さんが来るのやら?

 

毎度多いのは、目が腫れた・痛い・赤いという訴えです。

腫れた…だけでも、色々病気はありますが、患者さんのその他の訴えやエピソードを聞き、診察することが大事です。

 

かゆみを伴う時にはアレルギー性結膜炎。

子どもの急患では上位を占めます。

今の時期だと、スギ花粉からヒノキ・カモガヤ花粉に花粉症は移ってきています。

また、犬や猫を触って急に腫れることもあります。

 

腫れて痛みを伴うのは、めんぼのことが多いです。

『前にもらった目薬をさしているけど治らない…』

『その時は何の病気でした?いつ出してもらいました?』

『めばちこで。1年位前かな?』

関西の人だ…

『関西出身ですよね?』

『はい、○○(関西地名)に住んでいました。わかります!?その時にもらった目薬です』

『めばちこって言われたからです。こちらでは、めんぼって言いますけど。目薬は、開封したら1か月なので、効かないですよ。新しく処方しますね』

点眼薬も生ものと同様、新鮮さが命(効力)です。

 

腫れて充血と目の痛みの患者さん。

痛くてコンタクトレンズ(CL)メインのクリニックに行ったら、ここでは治療できないから…と言われて来院。

角膜にヘルペスが入っていて、炎症も起こしています。

下まぶたから頬も腫れていて、なにやらヘルペスの発疹の始まりのよう。

すべてのCLメインのクリニックがよくないわけではありませんが、何か起こった時にトータルに診察・検査・治療をしてくれるかかりつけ医があると安心です。

今の状態、今後の展望(良い方向と悪い方向)をお話し、ヘルペスの薬を処方。

免疫力低下した時になりやすいと言うと、

『そうなんですよ。疲れてるんですよね~』

長距離通勤のこと、仕事の事など悩みどころ満載。

『今日はゆっくり休んで、明日通院できる眼科に必ず受診ですよ。目優先ですよ』と念押し。

 

問診・診断・治療・説明。

医師としてすることは同じですが、患者さんはみんな違うので全く同じではありません。

 

もう少し続きます。

次回5月10日に。

 

 

カテゴリー:公センセの想い 公センセの日常の出来事 眼に関すること

2022.3.22  春色の~

『春色の汽車に乗って海に連れて行ってよ~』(赤いスイートピー)

陽気なある午後、思わず口ずさんだ曲。

この歌が流行ったころは、まだ乙女の院長。

おねだりしたら叶えてくれる誰かがいつか現れるかも!?と甘い歌声を聞きながら夢見がちに思ったものです。

あれから〇十年。

今や、何処に行くのも一人で行けるし、何なら連れて行ってあげますよ!のスタンス。

 

今日は、職場(産業医)のスーパーに。

駅から職場までは、口ずさむのにふさわしい長閑さがあります。

 

今月から新店長。

店長は1~2年程度で異動があり、しかも、各部署100人超のスタッフを把握しなければいけないのでなかなか大変です。

 

安全衛生委員会に出席です。

各部署のヒヤリハットと対応策。

例えば…

 

*水産部門では、氷水だけが滑る原因と思われているけれど、魚脂も滑る原因となっている

→早急に床の塗り直しをすることに。

 

*冷凍ケース下の霜や水濡れ予防のタオルが敷いてあるが、タオルの裾を客のつま先で踏んでしまい転倒の恐れがある

→吸い取り専用のソックス(absorbed sock)を導入

(本当は冷蔵ケースを買い直せばいいのですが、予算上、先延ばし)

 

*雨天時の床の水濡れの掃除が遅いと転倒の恐れがある

→気が付いたらすぐ拭く

→広範囲の場合は、足元注意の標識(増設)を立て、グリーンキーパー(清掃業者)に連絡

 

*惣菜で使用した廃棄油脂を1週間貯めておく屋外の貯留庫(その後産廃業者に)周囲の油のべたつきが多く転倒の恐れあり。

→貯留庫周辺に人工芝を敷いた

 

*有事に備えて避難経路の拡大

→商品の陳列方法を考えて、通路をさらに拡大(元々かなり広い店内で通路も広々なのですが)。

出入り口付近のカート置き場の見直し。

 

などなど。

 

『以上で、本日の安全衛生委員会を終わります』新店長。

ちょっと、ちょっと…

『店長さん、私からもちょっといいですか?』

『あっ、先生!どうぞ。お願いします』

私(産業医)、忘れられてた?

今回、男性スタッフばかりの出席だったから、紅一点(公だけに…)で目立っていたはずなのに!?

それとも、前職場の産業医(男性)は無口だったのか?

今日の会議で気づいた点、巡視等で気が付いた点、昨今の新型コロナウイルス予防の話など手短に発言します。

 

院長は、産業医や学校医を兼務していますが、委員会では、必ず発言するようにしています。

『特にありません』と答えるのは、職務を全うしていないようで、気が引けます。

毎回、何か変化はあるはずで、事実(問題点)と解決法(改善法)をセットで考えるようにしています。

 

新しい店長さんやスタッフと一緒に、良い職場環境作りのお手伝いが出来たらと思います。

 

 

駅までの帰り道、陽気に誘われて回り道をしてみました。

途中で、ウナギの寝床みたいな駐車場の奥にパン屋さんが。

そろそろとドアを開けると『いらっしゃいませ!』の若夫婦の声。

クリーパンをひとつ購入。

駅のベンチで、おやつタイム。

春色のクリームが優しい。

小さなお楽しみ(変化)に満足し帰路につきました。

 

 

 

 

カテゴリー:公センセの想い 産業医

2022.3.8  世界緑内障週間2022

緑内障診療ガイドライン第5版が届きました。

診療ガイドラインとは、エビデンス(科学的根拠)に基づいて最適と思われる治療法を指示する文書のことです。

2003年に初版が出版されて以来、5回目の改定。

 

医学全般、日々進歩しています。

眼科学もそう。

その中の緑内障診療についてもそう。

 

院長が初めて参加した全国的な学会は、緑内障学会。

私たち研修医は、一般講演の内容もほとんど理解できず???

大御所の先生たちの特別講演の内容も???

『なんか、難しい話ばかりだったね~』

『どうやって聞いた講演をまとめよう?』などなど。

メーカーの担当者さんが『大丈夫ですって。すぐに発表する側になりますよ』と、ご飯を食べながら励ましてくれました。

あんな難しいこと、わかるようになるの?出来るようになるの?と、見えない未来の中、先輩たちの指導を仰ぎながら日々緑内障診療。

いつの間にか、学会の内容も理解できるようになっていたのでした。

 

緑内障治療の原則は眼圧下降です。

まずは点眼、そしてレーザー、手術があります。

院長が研修医の頃、教授が好んで使用されていた点眼薬も、今ではほぼ消失。

代わって、様々な機序の新薬は開発されていますし、配合剤(2種類が1ボトルに入っている)も主流になってきました。

レーザー治療も、以前からありましたが、古い術式から新しい術式に変化しています。

また、手術も、大枠は変わっていませんが、派生して色々な術式が発表されています。

 

緑内障に対する考え方も変わってきました。

院長が眼科医になる以前は、緑内障は眼圧が高いことがスタンダードでした。

しかし、研修医の頃から、眼圧が正常な(基準値より低い)緑内障もある…と言うことが分かっていました。

今では『正常眼圧緑内障』ですが、当時は『低眼圧緑内障』と呼ばれていました。

日本人の多くは正常眼圧緑内障というのも、2000~2001年の多治見市疫学調査で分かったことです。

眼圧だけで判断できない。

視神経の変化、視野の変化、正確な眼圧測定が大事。

研修医の頃に叩き込まれました。

 

元々、眼科は、検査機械の多い科ですが、診断機器も著しく進化しています。

人間の眼ではわからない、眼の奥(網膜や神経)の様子をあらゆる方向から観察することが出来ます。

視野変化が起こる前の緑内障(前視野緑内障)という新しい病名も出来ました。

 

画像を用いての診断や説明は、今では緑内障診療に欠かせません。

もちろん、機器だけに頼るのではなく、あくまで眼科医としてのスキルあってのことです(自戒)。

 

今年の世界緑内障週間・ライトアップinグリーン運動のスローガンです

 

『早期発見・治療の継続・希望

あなたの目がずっと見えていますように

40歳を過ぎたら眼の定期検診を!』

 

日本の視覚障害の原因の第1位は緑内障(28.6%)です。

しかし、自覚の少ない初期・中期に発見され、治療すれば、不自由なく一生を過ごすことが出来ます。

40歳以上の約20人に1人は緑内障になっていると報告されています。

眼科検診で異常なければ安心。

もし緑内障と診断されても、眼科医と二人三脚で進行を抑えられるよう頑張りましょう!

 

当院も運動に参加しています。

3月6日から12日まで、花壇にグリーンライトが点灯します。

世界緑内障週間

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー:健康 公センセの想い 眼に関すること

2022.1.11  仕事は生きがい

本年もよろしくお願いいたします。

 

どんな一年になるのやら?

 

師事していたA先生は、退官後、新天地で緑内障診療。

昨年末、話をする機会がありました。

手術数もどんどん増え、『今が一番手術上手いかも。70歳までは手術できそうだね』

社会的に、既に頂点と認められている立場でも、前向きな姿勢。

『何歳になられましたか?』

『67歳』

『え~先生、そんなお歳になられたんですか?』

『はせこう先生だって、もう○○歳(内緒)でしょ。入局してから30年なんだから』

確かに。

 

 

医師会のあいさつで最年長の元医師会長B先生が登壇。

ずいぶん前に診療所の仕事は譲られたものの、未だ公の場に出られてお元気。

かなり減らしてはいるものの、医師として仕事をされている88歳。

開業時の挨拶に伺った時は、すごく怖かったけれど、今は好好爺です。

 

休日診療所の当番表を見て、『私、半日のはずなのに』と訂正を求めたC先生。

75歳以上は、午前午後1日でなく半日勤務になります。

『先生、一体おいくつですか?』

『もう、とっくに75超えているわよ』

全然変わらない、はつらつとしたC先生は、まだまだ自身のクリニックで診療をされています。

 

素晴らしい先輩たちに、敬意を払い、勇気をもらいます。

 

『人生(仕事)の上り坂は、歳と共にきつくなりますよね』

これは、大手企業の役員だった旧友からの新年の言葉。

同じ机を並べた彼女は、進路は違いますが、大きな世界で戦ってきた尊敬できる人。

今も新しい仕事に挑戦しています。

 

先輩たちを見れば、いくつになっても仕事が好き。

趣味を超えるやりがい・張り合い・生きがいなのだと思います。

 

若いころは、エンジン全開!加速しっ放しでした。

やることだらけで、ゆっくりする暇もなければその気にもならない。

つらい時もたくさんあったけれど、若さゆえに乗り切れました。

休まず続けてきたことで、少し減速してもゆっくりでも上っていける予測は立ってきました。

それでも、仕事を続ける限り、上っていく(知識・技術など)責任があります。

 

『健康第一だね~』

その通り。

この言葉も、合言葉になりつつあるオバサン院長世代です。

 

早速、今年は元旦からパーソナルトレーナーと筋トレ。

身体も鍛え、その後のメンテナンスも忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

カテゴリー:健康 公センセの家族・恩師・友人など 公センセの想い

2021.11.16 目が黄色い!?

日常診療で結構多い訴えのひとつは、『眼が黄色い』

医学生の時は、眼が黄色い=黄疸=肝機能障害と覚えたものですが、医療も発達し早期発見早期治療の現在、少なくとも日常診療で黄疸を見つけることはありません。

しかし、患者さんの中には、『黄疸では?』と問診に付け加えている場合も。

 

気にして来院される患者さんの多くは女性です。

茶目(角膜)の3時、9時方向の白目(結膜)が黄色っぽくなっています。

やや隆起している場合もあります。

『瞼裂斑(けんれつはん)』と言います。

結膜に限局し、角膜には及ばないのが特徴です。

病気ではないので、治療の必要はありません。

例えて言うなら『眼のしみ』

紫外線の曝露が要因とされています。

加齢により、紫外線の曝露量が蓄積され多くなるので、30代くらいから見られることも。

 

ただし、瞼裂斑に炎症が起こり、充血や痛みが出れば、瞼裂斑炎(けんれつはんえん)となり、炎症を抑える治療をします。

また、瞼裂斑は時として、ドライアイの症状を悪化させます。

瞼裂斑が大きめのドライアイの人は、涙が瞼裂斑方向(3時、9時)に流れていきやすい(盗涙とも言われます)ので、ドライアイ症状が悪化しやすくなります。

治療の必要がない旨を伝えると、安心される一方、長年(多くは加齢)の紫外線曝露と知りショックを受ける患者さんも。

院長自身は、意外にも、瞼裂斑を認めません。

眼科医30年、専ら暗室での仕事が奏功しているのかも?

 

実際、中学生を対象に、石川県の内灘町と沖縄県の西表島で瞼裂斑の出現を比べたスタディがあるのですが、より紫外線の強い西表島では中学生でも瞼裂斑が認められた報告があります。

さらに、アフリカでは、出現率が高くなっています。

 

さて、茶目(角膜)に白っぽい出来物が…と来院されるのが『翼状片(よくじょうへん)』です。

瞼裂斑と同じ位置(多くは鼻側)に出来ますが、白目(結膜)の一部が、角膜に侵入してきます。

自覚がないことがほとんどですが、大きく侵入してくると、充血や異物感を伴います。

さらに、角膜中央に向かって進行すると、乱視が強くなってきます。

翼状片は何年、何十年もかかって進行します。

しかし、乱視が強くなってきたり、黒目(瞳孔)と茶目(角膜)外側との真ん中くらいまで侵入したら、手術を勧めます。

翼状片の原因も、紫外線の曝露と考えられています。

 

 

病院時代には、瞼裂斑が主訴の患者さんを診ることはありませんでした。

重症疾患や、希少疾患が多くを占めます。

開業して、地域のお医者さんになると、ちょっとしたことでも相談に来院されます。

治療の必要がないものについては、心配ないとお伝えしますが、共感と安心を提供することも大事だと思っています。

 

オバサン(院長)になって、眼科医経験・人生経験を積んだ分、共感できることは多くなりました。

年を重ねるのも悪くないと思うこの頃。

オバサンだけどオバサンじゃない!のモットーで。

(このニュアンスわかってもらえますか?)

 

こちらもご覧ください

サングラスどう?

 

 

 

カテゴリー:公センセの想い 眼に関すること

2021.9.14 見つめられても…

高校生のA君が、お母さんと一緒に来院されました。

『1年位前から、息子と話していると、片眼が外に向いているんです』と、心配そうなお母さん。

 

『自分では、気づいていますか?

お母さん以外の周りの人から言われたことは?』と本人に質問。

 

自分で気にしたことはない。

母親だけが気にするだけで、周りは誰も気づいたり、指摘しないそう。

父親からも(まあ、この年頃だと、父親と顔を合わることも少ないでしょうが)。

 

『まじ、きもいんですよ~この人(母を指して)。

話してると、俺の顔じっと見てきて…まじ、うざいんっすよね~

それで、なんか変…とか言ってくるし…』

院長の脳裏に『うっせわ~♪』が流れます。

母親の前で…

 

『まあまあ…診察始めましょう』

 

診察を始めます。

ペンライトを持ち、正面視させると、両眼ともまっすぐ前を向きます。

しかし、斜視検査をすると、片眼が外側に向きます。

輻輳(寄り目)は十分できています。

軽い近視あり。

その他、眼の病気はありません。

片眼の外れ方も軽度なので、立体視は正常でした(斜視だと立体的に見る力が育たないことがあります)。

 

『お母さんのご指摘のように、やはり、片眼が外向きますね。

いつもは正面視で問題ないので、間欠性外斜視です』

『え~何々?まじっすか~』

 

間欠性外斜視は、正面視だと、まっすく前を向いているのですが、何かの拍子で片眼だけが外側を向く斜視です。

外向きの力が多々強いので、片眼が外側を向いてしまいます。

いつも(恒常性)ではなく、時々(間欠性)。

緊張が取れたときとか、気が抜けたときに、片眼が外れやすくなります。

なので、人前(学校などでの緊張状態)では気づかれないことが多いです。

家で家族が気が付くか、自分で気が付くか…

子どもが小さいときは、母親(たまに父親)が気付くことがほとんどです。

学校検診で見つかることもあります。

 

治療は、外向きの程度により、経過観察・眼鏡・手術があります。

Aくんには近視もあったので、眼鏡を処方することにしました。

 

『どう?』

『いい感じっす』

『お母さんが気付いてくれて、眼科受診することになって良かったですね~

お母さんほど、Aくんのこと見つめてくれる人はいませんよ。

だから、変化に気づけたんだから。

うざいなんて言わないで。

ね~お母さん』

お母さんをしっかりフォロー。

 

『わかるけど、時々マジうざくなるんですよ~』

息子の言い分もあるけれども…

 

息子も、思春期の頃、母の気持ちも知らず人前でボロクソに言ったよな~

母の愛は無限の慈愛です。

パートナーの愛は、恋愛から始まる有限の愛。

長い年月をかけて、慈愛になるのだけれど(院長も慈愛の域に…)。

 

親子連れが来院される度に、自分の子育てを顧みて、診療後、安心して帰っていただきたいと思っています。

 

*来週は『公センセの部屋』お休みします

カテゴリー:クリニックに関すること 公センセの想い 眼に関すること

2021.8.31  パラを見る

東京2020パラリンピックが開催されています。

オリンピックはニュースで結果を知ったくらいでしたが、パラリンピックのいくつかは、中継で見ました。

『障がい者スポーツ医』としてはぜひ見なければ!

『障がい者スポーツ医』とは、障害がある人たちがスポーツを生活に取り入れ実践していくためのスポーツ指導者です。

日々の健康増進のためのスポーツから、競技としてのスポーツまで指導内容は多岐にわたります。

専門科目は多岐にわたるので、恐らく、各々自身の専門科を活かしたスポーツに関与することが多いと思います。

院長は眼科医なので、視覚障がい者スポーツに特に興味があります。

 

視覚障がい者の種目としては

ゴールボール

5人制サッカー

陸上

水泳

柔道

自転車(二人乗りで前に晴眼者、後ろに視覚障害者)

 

視覚障がい者と言っても、その程度は様々です。

視力の程度(全盲~0.1)や視野の程度によってクラス分けがなされます。

クラス分けをするのは、障がい者スポーツ医の中でもパラリンピック級の選手のレベルを判定できる上級の医師たちです。

障がいの部位(視覚や身体、知的)などにより、各種目ともクラス分けがなされています。

個々の障害が競技に及ぼす影響を出来るだけ小さくし、平等に競い合うために必要な制度です。

 

さて、一番気になっていたのは、ゴールボール。

ゴールボールは、視覚障がい者だけが対象で、交互に投球して相手のゴールを狙い、得点を競うスポーツです。

 

院長は、2回、ゴールボール実践体験があり、少し身近に。

まず、視覚障害の程度による不公平をなくすために、アイシェード(真っ黒なゴーグル)をします。

これで、まったく見えなくなります。

選手3人が横並びに位置するのですが、相手がどこにいるか見当がつきません。

鉛の鈴が入っている重さ1.25キロのボールを相手のゴールにシュートします。

ボールがガードされれば得点にならず。

ガードをくぐり、狙い通りにゴールに入ると得点が取られます。

暗闇の中で歩く、ボールを投げる(というより重いので転がす)…

音のするボールが向かってくるのはわかっても、正しい方向は?ガードするためにどの位置に向かっていけばよい?足取りも及び腰…

わずかな体験なのに、ぐったりの院長でした。

 

さて、実際の試合をテレビで見てみると…

投球の時点で、まったく違います。

体験の時は、選手はもう少しゆっくり投球していたと記憶していますが、勝負をかけた本番は全然違います。

ぐるっと回転させソフトボール投げ+砲丸投げも混じっているような投げ方(院長表現下手)で、すごい速さでバウンドして相手のゴールに飛んでいきます。

スピンの効いた時速60キロ程度ともいわれる重いボールをガードできるのは、圧巻です。

聴覚と触覚を研ぎ澄ますことで、ボールの軌跡や他選手の動きが分かるのでしょうか。

 

他の競技も見ましたが、障がいを克服して何かを成し遂げるのは大変なことです。

日常生活でさえハンディがあるのに、ましてやパラリンピックに出場など想像を絶するものがあります。

障がいを克服(残存機能・他機能を生かす・代替する、補装具を使う)して、健常人でさえ成し遂げられないスポーツの頂点に立ったパラアスリート。

 

パラリンピックを詳しく知り、大きな興味と知識を持って観戦できたことは、障害者スポーツ医として最初のステップ。

今後は、地域の障がい者スポーツの普及・指導に関わっていきたいです。

 

※関連記事もお読みください

→2020.3.3 障がい者スポーツ医

カテゴリー:健康 公センセの想い 眼に関すること

2021.8.17  法話有り難き

田舎育ちの院長は、小学校の時は、子供会活動として、週末地元のお寺にお経を習いに行っていました。

6年間毎週お寺に通い、家でも祖母や父母がお経をあげているのを聞いていれば、自然に暗記してしまうもの。

今でも、実家の宗派のお経はすらすら読めます。

院長の住んでいた地域は、恐らく集落全てが同一宗派のため、慣習的にお経を習いに行ったのだと思います。

お稽古が終わると、お供えのお菓子が分けられ、持ち帰ると、家の仏壇に再度お供えしてからいただきます。

6年生になると、お供えのお菓子を自分たちで決めて買ってこられるのも楽しかった思い出です。

お寺さんのお話は、子ども心に信心の気持ちを芽生えさせました。

花まつりから始まり、除夜の鐘つきなど、お寺はとても身近なものでした。

 

医学を学び医師になり、結婚して都会(名古屋です)に住んでいる今、宗教心はほぼ欠落してしまった院長。

それでも、お寺で法話を聞くのは好きです。

 

一度は行ってみたかった(ミーハーです)比叡山で、法話を聴く機会を得ました。

 

比叡山は最澄が延暦寺を創建。

以来、多くの名僧が、比叡山で修行して宗祖となられています。

今回、法話をいただくのは、大阿闍梨(おおあじゃり)様。

千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)を達成された僧です。

これは、比叡山で行われる、千日間にわたる最も過酷な修行です。

比叡山の峰をめぐって、約270か所以上ある場所に礼拝を続けます。

千日で歩く距離は、地球約1周分とほぼ同じ。

700日を終えると、9日間の断食・断水・不眠・不臥の命がけの修業に臨みます。

千日回峰行を達成した僧は大行満(だいぎょうまん)と呼ばれます。

 

その大行満を終えられた大阿闍梨様の法話。

 

お坊さんと言うと、高齢(自分より年上)を想像していましたが、登壇されたのは、46歳の大阿闍梨様。

15歳で仏門に入り2009年に千日回峰行を満行、大阿闍梨になられたそう。

まず、仏門への始まりから、千日回峰行を達成するまでを話してくださいました。

空腹には、割とすぐに慣れるそうです。

断水・不眠・不臥が続き、無心になっていく、感性が鋭くなっていく、体力だけでなく精神力の行…

余計なことを考える必要はなく、念じるのみ。

 

9日間の断食では、体重が12キロ減少したそう。

断食期間の3倍をかけて元に戻すそうです。

体重は戻っても、筋力までは戻らないという言葉は印象的(仏教に関係ないですが)。

 

やり遂げたという自信も必要だが、謙虚さを忘れないようにと心がけている。

行をさせてもらったことで、いろいろ経験させてもらい、そこから課題をいただき克服していく。

行を満行したといっても、その意味では、行は一生かけて続いていくのです。

 

俗世の私たちにとっては、想像もつかない偉業です。

でも法話のお話は、日々の自身の仕事(院長なら行=医師・医学)に置き換えることもできます。

 

有難い法話を聴いて、心が浄化されました。

 

お堂では、ふすまに入る陽の加減や遠く山裾のびわ湖岸を走る特急サンダーバードの音で時刻を推定した(非常に聴覚が鋭くなるそうです)という大阿闍梨様。

サンダーバードに乗りたいな~

大好きな阿闍梨餅を食べながら、時刻表をめくる、どっぷり俗世の院長です。

カテゴリー:公センセの想い 公センセの日常の出来事

2021.8.3 二桁の人

電子カルテになり、来院患者は、診察券番号・氏名・年齢ともに一覧で確認できるようになりました。

診察室のパソコンで、本日の混み具合や検査の進行具合などがわかります。

診察券番号の付け方は、病院やクリニックによって違いはありますが、来院順に付けることが多いと思います。

 

ある日、2桁番号の患者さんが。

ちょっと年季が入っている当院としては、非常に珍しいことです。

1桁は開院当日に来院。

1番から9番までしかありません。

数人は知人だし、一回きりの受診患者さんもいるし、緑内障で長く診ていた患者さんも数年前鬼籍に入られました。

2桁も同じく開院当日か翌日。

10番から99番が該当します。

○○A子さん…誰?

 

『○○A子さん、お入りください』

赤ちゃんを背負い、2歳くらいの男の子を連れた眼鏡をかけた女性が入室。

この顔、見覚えが…

『もしかして、△△(旧姓)A子ちゃん?』

『そうです。お久しぶりです。覚えてくれてましたか?』

やっぱり。

A子ちゃんは視力検査で来院した小学校低学年の女の子でした。

不同視(左右の度数の差が大きい)と乱視があることが分かり、弱視訓練を開始しした患者さんです。

眼鏡を常用することから始めました。

左右の度の差は縮まらなかったものの、最終的に両眼とも眼鏡で矯正視力が出るようになりました。

目の前の女性は成人した素敵な女性ですが、小学生のA子ちゃんも重なっています。

 

近況を聞くと、現在は関東在住とのこと。

『ちょうど、実家に帰ってきたので。定期検診と気になることもあったので、診てもらいに来ました』

『お母さんはお元気?』(お母さんの顔も浮かびます)

 

患者さんには失礼ですが、こうした再会は、患者さんからもらう、クリニックを続けるモチベーションアップとなるプレゼントです。

 

 

2桁の患者さんのひとり、Bさんからは、時々往診の依頼があります。

眼脂や、目の周りのただれなどで。

Bさんは90歳超。

残念なことに、認知症進行により、もう院長どころか、家族のことも施設の人のことも覚えていません。

診察券番号は、2桁前半。

受診された当時は60代でした。

施設入居された頃から、人の顔も物事もどんどん忘れられ…しかし、当時Bさんと交わした、いくらかの会話は、確実に院長には記憶されています。

 

 

2桁の人も、一回限りの患者さん、鬼籍に入られた患者さん、転居された患者さんなど、色々いらっしゃると思います。

ただ、開院当日と翌日の患者さんだけに、感慨深いものがあります。

 

 

記念日当日を覚えているのは、子どもの誕生日、自身の結婚式。

そして、院長にとっては開院日です。

周年が来るたびに、院長・スタッフ・患者さんとで築き上げてきたのだと実感します。

お店でも会社でも、何かをやり始めた当人は、その日は特別なんだと思います。

24年前の夏の日もセミがジージー鳴いていました。

A子ちゃんのように、5か月の次男をおぶり、2歳目前の長男の手を引く若いお母さんでした。

開業で、生活は一転。

育児より仕事優先、勉強優先。

でも、育児は待ってくれない。

今ほど筋肉はないが、日々を乗り切る体力。

今ほど知識・技術はないが、患者さんの症例から勉強させてもらう貪欲さ。

若さゆえの勢い。

 

来年の25周年に向かって、少しでも地域医療に貢献できるよう、初心忘れず、診療に励みたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

カテゴリー:クリニックに関すること 公センセの想い

2021.7.27 朝から見とれる

休日の朝、何やら活気ある若い衆の声。

カンカン、ガチャン、金属音が聞こえます。

何事?

ベランダから身を乗り出すと、近所のマンションの足場の解体でした。

ふた月ほど、修繕工事なのか、黒い網で覆われていたマンション。

住人は、毎日さぞかし暗いだろうね~

ちっとも工事が終わらない様子に、時々我が家の食卓に上る話題でした。

 

マンションは5階建て。

上から下まで7人のとび職人が、金属の棒や板を順々に手渡しし、下げていきます。

『ハイよ!』

『オーライ!』

『ヘーイ!』

聞こえてきた声は、手渡し時の掛け言葉。

命綱なしで、軽快にテンポよく作業が進んでいきます。

一番下まで降りてきた棒や板は、数本または数枚重ねて運び出す人がいます。

機械仕掛けの人形みたい!

見事な連携プレーは、一連の無駄のない美しい連続の動き。

思わず見とれてしまう院長です。

 

気が付くと20分余り。

見ると、マンション傍にも、見上げている人が。

あの人もきっと感動して、つい見てしまったのね~

 

足場の組み立ては、とび職の主要な作業内容の一つです。

足場の組み立て解体作業には、労働安全衛生法に基づいた特別教育を受けた者しか従事できません。

また、5メートル以上の足場の組み立て解体作業には、足場組み立て等作業主任者を選任しないといけません。

建設業の死亡労働災害の原因第一位は転落ですが、足場からの転落が多いのが特徴です。

 

産業医の勉強をして、かじった知識です。

建設業の産業医になったら、またまた、もっと勉強することがありそうです。

 

世の中には、たくさん仕事があって、どれも、適正と訓練を要します。

とび職の人たちの掛け声と一連の動きが美しいのも、熟練の技だからこそ。

 

 

どの仕事も、熟練されてくると、一連の動き・所作が美しくなります。

医師も、経験により、診療手順や手術手技は、無駄がなくなって洗練されていきます。

 

まだ慣れていないひよこスタッフが、眼底写真を左眼→右眼で送信してくることがあります。

電子カルテ上の並び方の違いだけですが、眼科医(院長)としては、右眼→左眼で送信、添付するよう伝えます。

カルテの画像の並びも整列されていると美しい。

病名も、屈折(目の前面)から奥に向かって付けていく。

そういうこだわりが、どの仕事も熟練していくにつれ、確立され、正確な仕事につながるのだと思います。

 

約1日かかって、マンションの全容が現れました。

住人のほとんどは、足場解体のとび職人には無関心のはず。

人生初のとび職メドレーを目の当たりにした院長。

何か得した気分。

そして、とび職人さんに改めてリスペクトした次第です。

どんな仕事も、必要とされている。

小さなことだけど、コツコツと。

院長の信条です。

カテゴリー:公センセの想い 公センセの日常の出来事 産業医
  • カテゴリー

  • 最近のエントリー

  • カレンダー

    2024年12月
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031  
  • アーカイブ

  • タグ

先頭に戻る