2019.12.3 まぶたがぴくぴく

『まぶたがぴくぴくする』と、心配になって来院される患者さん。

話を聞くと…

『突然起こるんです』

『1日に何回も起こります』

『数秒くらいの繰り返し』

『いつのまにか収まっているんです』

『収まっていたと思ったら、また急にぴくぴくするんです』

などなど。

 

自分の意思に関係なく、筋肉が勝手に動くことを『不随意(ふずいい)運動』と言います。

 

日頃の診療で多いのは、上記のような症状を訴えられる患者さんです。

片眼のまぶたに、限局的であることも特徴です。

目の周りにある眼輪筋(がんりんきん)の不随意運動で、正式には『眼瞼ミオキミア』と言います。

原因は、眼精疲労やストレス・寝不足…など。

ゆっくりと休息を取ると、知らないうちに症状が消えていることがほとんどです。

 

ただし、自己判断せず、眼科的な病気が隠れていないか、診察を受けてください。

 

片側のまぶたや口の動きがおかしいのは、『顔面けいれん』です。

まぶたがぴくぴくするだけでなく、顔半分の筋肉が過度に動く場合は、顔面神経の支障が起きている可能性があります。

原因の精査・治療のため脳外科へ紹介することが多いです。

 

本当の意味での『眼瞼けいれん』は、両まぶたに発症です。

『目が開けにくい』

『目を開けているとつらい』

『目を閉じていた方が楽』

挙句に、『運転が危ない』『歩いていてもぶつかってしまう』などなど。

 

中枢神経系の伝達異常と言われていますが、原因の詳細は不明です。

40歳未満では、向精神薬や睡眠導入剤内服が要因の一つとも言われています。

『眼瞼けいれん』の患者さんは、目が開けにくいだけでなく、まぶしさや不安症状も伴います。

ボツリヌス毒素のまぶたへの注射が第一治療法です。

ただし、数か月で効果が切れてしまうので、再度行う必要があります。

当院ではボツリヌス毒素の注射はしていませんが、『他院で注射したが再発した』患者さんは、効果持続期間が終了したためと考えられます。

また、ボツリヌス毒素が効かない場合もあります。

眼瞼けいれんの専門医は少ないため、かなり深刻な患者さんには、遠方へご紹介することもあります。

 

さて、先日(2019.11.19)『メーテレ』テレビの朝番組『ドデスカ!』で『まつ毛ダニ』のお話をしました。

『まつ毛のきわまで清潔に』とお話ししましたが、まつ毛内側にあるマイボーム腺(脂が出る)を詰まらせるのも良くありません。

目を温めるホットアイマスク(おしぼりでも可ですが冷めやすい)はお勧めです。

涙成分を安定させるので、ドライアイにも有効です。

さらに、リラックス効果が大きいです。

安眠できるので、院長は就寝時にも愛用中。

ストレスによる、『まぶたのぴくぴく(眼瞼ミオキミア)』にもお勧めです。

 

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2019.11.19 宿題と肥満者率

医師会の講演会は、主に医学の話題ですが、今回は経済学のお話。

演者は、Eテレ『オイコノミア』という経済番組に又吉直樹さんと出演されていた、大阪大学の大竹先生。

又吉絡みで見始めた院長ですが、平易な言葉で、素人でも経済学をかじれる良質の番組でした。

 

今回のタイトルは『医療現場の行動経済学』

『行動経済学』とは、心理学や社会学の成果を経済学に組み入れた、経済学の一分野だそうです。

現実の人間の思考の傾向を考慮して、経済を考える、というもの。

 

例えば…

問1

1.コインを投げて表が出たら2万円もらい、裏が出たら何ももらわない。

2.確実に1万円もらう。

どちらを選びますか?

問2

1.コインを投げて表が出たら2万円支払い、裏が出たら何も支払わない。

2.確実に1万円支払う。

どちらを選びますか?

大多数は、問1では2を選び、問2では1を選ぶそうです(院長も同じ)。

得をすることは確実な方を取りたいけれど、損をすることは不確実な(危険性のある)方を取る傾向があるそうです。

 

同じ金額だと、得をした嬉しさよりも、損をした悲しさの方が大きくなる。

また、嫌なことは先延ばしし、嬉しいことは前倒しする傾向もあるそうです。

これらを含め、ヒトの心理をどのように医療現場の経済で活用するか。

 

薬や手術の効用・成功率と副作用・不成功率を患者さんに伝える場合。

副作用や不成功率がわずかだったとしても、患者さんはそれ以上に大きく捉える傾向があることは、自身の経験からも気づいていましたが、ヒトの心理的な傾向・癖だと初めて知りました。

医師は、エビデンスに基づいて、客観的に事実を話しますが、良いこと(回復・治癒)と悪いこと(悪化・一生の病気)では、患者さんの受け止め方が違うのは、もっともです。

 

健康診断の受診率を上げるには、どういう文面が一番有効か?

臓器提供のドナーカード同意率を上げるには?

予約の無断キャンセル率を防止するには?

大腸内視鏡の痛さの記憶を和らげるには?

などなど、数々の論文を引用し、解説されました。

医学と同様、リサーチ・集計・解析・結果・考察という流れは、経済分野の研究においても同じだと思いました。

数学も駆使し、文系というより理系なのでは?と思います。

 

中学生の時、夏休みの宿題はいつ頃やることが多かったですか?(大阪大学調査)

1.夏休みが始まる最初の頃

2.どちらかというと最初の頃

3.毎日ほぼ均等

4.どちらかというと終わりの頃

5.夏休みの終わりごろ

 

院長は1です。

『宿題後回し傾向』が強いと、喫煙率やギャンブル習慣、飲酒習慣が優位に高くなることが分かっています。

消費者金融の利用も。

それ以外に、肥満者率ともかなりの相関があることがわかっています。

 

中学時代の宿題癖で、将来の傾向までわかるとは…

 

ちなみに長男に上記の宿題の問いをしたところ…

『当てはまるの、無いわ』

『えっ?』

『だって、宿題やったことなかったもん…やろうとすら思わなかった』

選択肢に該当しない人がいるとは…

理由の詳細まで忘れましたが、何度も学校から親(院長)の呼び出しがあったからね~

相関の結果を知ると、先が思いやられます…

 

『行動経済学の知識で患者さんの意思の傾向を理解できる』

『何気ない表現で患者さんの意思決定が変わる』

 

勉強したことを日々の医療現場で試してみようと思います。

愚息が今からでも『宿題先終え傾向』になるよう、家庭でも行動経済学試してみます。

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2019.11.12 ずっとAだったのに…

中学3年生のB君が来院しました。

『最近、プリントとかを離して読むようになったんです。離したほうが見やすいって言うんです。若いのに』と付き添いのお母さん。

裸眼視力は右1.2左1.2でしっかり見えています。

近くの見え方も、右1.0左1.0で全く問題なしです。

『学校の視力検査ではずっとA(1.0の指標が読める)だったんです』

眼科の病気になったこともないので、生まれて初めての眼科受診でした。

眼位(目の向き)は正常。

診察でも異常はありません。

 

眼科では、視力検査と同時に、屈折検査(機器)も行います。

データによって、近視・正視・遠視・乱視があるのか、どの程度なのかが分かります。

B君は軽度遠視が出ていました。

 

乳幼児の多くは軽度の遠視ですが、就学時の頃には正視(近視も遠視もない状態)になります。

軽度の遠視では問題はありませんが、強度の遠視では近くも遠くもぼやけて見えるようになり弱視になることが多々あります。

また、無理にピントを合わせようと調節すると両目が内向きになる内斜視を起こします。

小学校低学年までの子供は、調節力(ピント合わせ)が強いので、視力が良くても、遠視が隠れていることもあります。

また、視力が出にくく近視の値が出ても、実は近視ではない場合もあります。

子供では、調節を完全に取ることが出来ないため、調節を麻痺させる検査用目薬を使い、正しい値を把握します。

 

中学3年生だと、通常の屈折検査で十分です。

しかし、B君は『視力良好』『でも、近く見づらい』『軽度遠視』から、調節麻痺点眼を使い検査をしました。

すると…中等度の遠視が隠れていました。

これじゃあ、近くが見にくいわ~

 

B君は生来中等度から強度の遠視があったと推測されます。

3歳時健診以降、視力や眼位で異常が見つかることが多いのですが、B君はたまたま眼位異常もなく視力低下もなくスルーしてきてしまったのでした。

老眼と違って、調節力が十分あり、近くも見えるので、本人も周りも気にしていなかったようです。

中学3年生になり、勉強量も増えてきたあたりから、近くにずっとピントを合わせるのが辛くなってきたようです。

早速、遠視のメガネを処方することにしました。

 

後日、出来たメガネの確認にB君来院。

『すごく良く見えます。目も楽だし』

B君、良かったね。

お母さんも、『あれ?』と思い連れてきてくださって良かったです。

ぐっと、勉強しやすくなったはず。

受験、頑張って!

 

視力検査は、意義があります。

ただし、視力検査だけでは、分からないこともたくさんあります。

視力が良くても、例えば『本を読んだり細かい作業をすると集中できない・すぐ飽きる』場合、強い遠視が隠れていることもあります。

子供(未成年)は、自分からはあまり訴えないので、周囲が『あれ?』と思ったら受診をお勧めします。

一番楽な(目の)状態で、最大視力を出すアドバイスをするのが眼科医です。

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2019.10.29 電子カルテがやってきたけど…

今月より電子カルテを導入しました。

 

初日、メーカーのSE(システムエンジニア)さんが付き添ってくれましたが、『先生、操作早いです!全然問題ないですよ!2週間後に再訪します』

『行けるわ~』と調子よく見送るも、その晩、ぐったり。

気合を入れて、1週間、電子カルテで診療をしていたのですが…

入力操作の不慣れもあるものの、未だかつてない肩凝りと眼精疲労の日々。

人並み以上に肩・首・背中の筋トレをしているのに何で~

診療の合間に、ストレッチをせざるを得ない状況。

『電子カルテ、返品したい~』

 

産業医の公センセ(院長と同一人物)の声が…

『不調を来たしている原因を考えましょう。問題点を挙げて、解決できるようにしましょう』

公センセが職場巡視をします。

 

問題点は…

①PCの傾き

眼科用の電子カルテは、スケッチもできるように、PC画面が後方に傾けてあります。

40度くらい。

図を描くにはいいのかもしれませんが、室内の蛍光灯がPC画面に反射します。

その跳ね返りの光の下での入力は、非常に疲れます。

また、PC画面に近づこうとして、かえって猫背になります。

 

②PC画面の背面と文字のコントラスト

背面は薄いグレー、カルテの文字の色は黒ですが、字体がとても細い。

コントラストが悪いので、入力や判別の確認に非常に疲れます。

 

③キーボードの色と文字。

黒い本体に灰色の文字のキーボードが届きました。

コントラストが悪く、明るいところでの作業ならまだ良いのですが、眼科のような暗室では不向き。

これらをまとめて、SEさんに連絡。

 

今までは、検査結果の提示などでPCを使用するものの、あくまで紙カルテがメインだったので、机や椅子の高さ、勾配を気にしていませんでした。

しかし、PC作業には、環境作りが大事です。

ディスプレイから40センチくらい離して。

椅子は、両足裏が床に着地するように。

机と身体は直角になるよう、目線はややPCを見下ろすように。(←眼の乾燥を防ぎ、ドライアイ・眼精疲労予防になります)

キーボードを操作する腕を置くレストを椅子かキーボード周囲に置く。

今までは、気にしていなかったことを見直してみました。

 

さて、PCの方は…

①角度を15℃くらいに立ててもらいました。

蛍光灯の反射がなく、これで一番のストレスから解放。

図は美しくは描けませんが(院長の技量?)所見は問題なしです。

②背面は、わずかにしか明るく出来ないとのこと。(画像や写真を見るときのコントラストのためらしい)

字体は、少し太く強調されました。

③本体が白、文字が黒のキーボードに。

 

今回のPCに対する不満は、加齢に伴うコントラスト感度の低下によるものです。

45歳くらいから急激に低下してきます。

水晶体の濁り(白内障までいかなくても)や硝子体の濁り、調節力(ピント合わせ)の低下が原因です。

明るいところでは見えていても、薄暗いところで小さな文字は読みにくくなったり、薄暮で運転しにくくなったり…と言った症状です。

今回の電子カルテも、もっと若い眼科医を想定していた設定?(眼科カルテ専門メーカーです)

あと10年早く導入していたら、不満の多いオバサン院長とは思われなかったかも?

でも、大事なことは、今の自分の身体状況に合わせて、環境を変えること!(45歳以降)

物に自分を合わせるのではなく、自分に物を合わせること。

 

産業医公センセとともに、50代眼科医に優しい作業環境作り。

究極のカスタマイズ目指します!

 

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2019.10.1 Optosがやって来た!

先日、講習会の案内が届いた最新機器、超広角眼底撮影のOptos(オプトス)。

講習会参加の旨を、ディーラーさんに話したところ…早速、試乗車ならぬ試用Optosを手配してくれました。

 

Optosは、1ショット0.4秒、無散瞳で眼底の約80%の面積を撮影できる操作型レーザー検眼鏡です。

簡単に言えば、瞳孔を薬で大きくしなくても、目の奥の隅々まで一回で撮影できる眼底カメラです。

 

普段の診療で見ている(見えている)部分は、視神経や黄斑と言った、一番大事な中心部分です。

しかし、飛蚊症や糖尿病などがあり、周辺部まで詳しく見る必要のある場合は、瞳孔を大きくして観察しないといけません(でした)。

そのうえで、患者さんに『左上見てください、左、左下…』と目の向きを指示します。

更に、眼科医も、患者さんの目の動きに合わせて、身体(腕)を動かします。

傍から見ていると、腕と首と腰を使ってストレッチをかけているような動きです。

一朝一夕では身に付かないので、研修医時代に、身体と目の動かし方でどこまで見られるようになるかを習練します。

 

それが…もっと広い角度を、Optos1枚撮ることでカバーできるのです。

 

スタイリッシュなデザイン。

インテリア(こんな高価なインテリアはありませんが)として置いても違和感がありません。

 

早速、撮影した画像は…どれも、広範囲で鮮明!

 

飛蚊症で来院された患者さんに撮影して、心配がないこともお話しできます。

糖尿病網膜症は、周辺部から小さな出血が見つかることもありました。

もちろん、必要な場合は、更に、瞳孔を大きくして精密眼底検査をしますが。

 

試用品ながら、すっかり虜になってしまった院長。

『絶対欲しい!』

講習会までに(もちろん講習会参加しました)購入を決定!

先週、新品のOptosがやって来ました。

 

春にOCT&OCTA(名前はトリトンです)がやって来て、大活躍中。

今秋にはOptos(名前はデイトナです)がやって来て、こちらも、日々の診療に大活躍してくれること、間違いなしです。

 

『最新機器だね~』と声を掛けてくださる患者さんも多く、ちゃんと自分の受ける検査機器を観察しておられるようです。

 

同時に、電子カルテも導入しました。

眼科は、他科と違い、視力を始め視野やOCT&OCTA、Optosなどあらゆる検査と画像をカルテに繋げないといけないので、質量ともに多く、大変です。

今までも、視野や画像の一部は診察室のPCに繋いでいましたが、今まで以上に『診療の見える化』を図りたいと思います。

まだ慣れるまで、バタバタしておりますが、日々スムーズに稼働できるようになってきています。

 

15年位前、大学病院で緑内障外来を担当していた時に電子カルテが導入されました。

その当時はとても使いにくかったのですが、同メーカーながら、現行版は、ずっと改良されてます。

 

また、先日、東日本大震災で津波に被災した三陸の開業医の先生から、紙カルテは全滅だったけれど、電子カルテは1か月で復旧したとの体験談を聞きました。

 

Optosがやって来ました!

電子カルテがやって来ました!

こうクリニックも、オバサン院長も、まだまだ『わくわく』!

またまた『わくわく』!です。

ときめき?の秋です。

検査機器の紹介ページもご覧ください。

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2019.9.3  運転免許の落とし穴

高齢者の自動車事故、あおり運転など、自動車事故に関するニュースを聞かない日はありません。

 

普通運転免許取得の適合視力の条件は…

『両眼0.7以上、かつ一眼でそれぞれ0.3以上、又は一眼の視力が0.3に満たない方、若しくは一眼が見えない方については、他眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上であること』(警視庁)とされています。

 

当院でも、免許の更新案内が来ると、『視力は大丈夫か?』『メガネはあっているか?』『メガネを作って行った方が良いか?』などと相談に来られます。

単純に、メガネで矯正できる場合は、処方。

『更新の時だけでなく、運転時はいつも装用してくださいね』と念押し。

『メガネでは無理です…眼の病気の治療をしましょう』更新を断念してもらう場合もあります。

時には、『認知症疑い』(当院でも認知症テスト実施します)となり、専門医を紹介することも。

 

さて、眼科医が危惧しているのは、両眼0.7以上でも、視野障害のある患者さんです。

例えば、緑内障や網膜色素変性症などで、視野狭窄が進行する患者さんです。

眼科医としては、出来れば運転は避けた方が…と思う患者さんでも、両眼の中心視力があれば、免許更新は出来てしまいます。

極端に言えば、まるい小さな筒(直径1センチくらいの)を目に当てて、見ているような状態でも、免許更新は可能です。

 

そこで、最近、眼科で話題になっているのが、ドライビングシュミレータ。

先日の研修会では、実物を見ることが出来ました。

画面に道路や、信号・標識などが出てきて、ハンドルを握っている自分は、実際に運転している感覚になります。

途中、歩行者が飛び出してきたり、車がわき道から出てきたり、停車車両があったり、予測不可能な出来事が起こります。

運転者の目がどこを向いているか、追跡されます。

事故が起こったり、ひやりとした場面などと、視野計による視野欠損部位結果との対応により、自身の運転を省みることが出来ます。

例えば、緑内障で上方視野が広く欠損していると、標識・信号を見落とす恐れがあります。

中心下方の欠損があると、左右からの急な飛び出しへの反応が遅れる恐れがあります。

視野欠損の進んだ重度の緑内障患者さんは、正常な視野を持つ人と比べて、およそ3倍の確率で交通事故を起こすという報告もあります。

 

自動車はとても便利なものですが、自分の視野欠損がどの程度あるかを自覚して、慎重に運転してもらいたいです。

眼科医は、『眼科的には運転はお勧めしない』場合も含め、助言しかできません。

運転免許試験場で更新出来たら、あとは自己責任です。

『ヒヤリ』とすることがあれば、視覚・聴覚や認知機能・運動機能に問題があるかもしれません。

やり過ごさずに、クリニックを受診してください。

 

ちなみに、東京の西葛西井上眼科病院では『運転外来』が開設されました。

ドライビングシュミレータを使用して、自分の運転の確認、眼科医からの助言が得られます。

 

近い将来、運転免許の取得・更新もAI主導になるかもしれません。

視力以外の要素も加味し解析して、『更新可』『更新不可』と、AIから言い渡されるかも?

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2019.8.20 虫が飛ぶ

日々の診療の中で、『虫が飛んで見える』『糸くずのようなものが見える』と訴えて来院される患者さんがあります。

基本的な検査をした後は、瞳を検査薬で大きくして精密眼底検査を勧めます。

この場合、帰りは、車を運転して帰ることはできません(瞳が開いて眩しくなり、ピントが合わないので)。

 

精密検査をした後、ほとんどの患者さんには『飛蚊症(ひぶんしょう)ですね。心配ないですよ』とお話しすることが出来ます。

 

『飛蚊症』とは、眼球内に糸くずや虫(蚊)のような黒い影が飛んでいるように見えることです。

眼球内には、硝子体(しょうしたい)というゼリー状の物質がつまっています。

若い時は、ゲル状で網膜にぴったりくっついています(ゼリーでしっかり充填されている眼球)。

加齢に伴い、ゼリーの中でも、水が多いところ、ゲルが強いところに分かれます。

その境界に光が入ると、光の影が、黒いものとして目に映るのです。

 

硝子体の水分が増えて、網膜の後方から剥がれることを『後部硝子体剥離』と言い、50代では25%、80代では90%の人に起こり、飛蚊症の原因となります。

 

網膜に問題がなければ、必要以上に心配する必要はありません。

『飛蚊症は治りますか?』と聞かれれば、『問題のない飛蚊症は、無くなることはないです(濁りだから)』

もちろん、濁りが光の筋道に入らなければ、目に映らないので、治ったような気になることはありますが。

残念ながら、病気でないものに治療法はありません。

飛蚊症に慣れるしか…です。

 

ただし、網膜に弱いところが見つかった場合は、定期的な検査をお勧めします。

場合によっては、網膜裂孔(網膜に穴が開く)、網膜剥離(網膜が剥がれる)につながるおそれもあるからです。

 

検査の結果、心配がないことがほとんどですが、あくまで精密検査をした結果。

精密検査をしないで、『大丈夫ですよ~』という無責任な発言は慎むのが眼科医です。

 

さて、先日、黒い水玉が見えると、来院されたAさん。

1週間前

から、黒い水玉が見えるけれど、様子を見ていたとのこと。

どんどん黒い水玉が増えるとともに、視力が落ちてきた…とのこと。

下方も見にくいです…と。

予想通り、『網膜剥離』でした。

しかも、上方から網膜が剥がれており、中心にかかっています。

緊急性マックス!

結果についてお伝えし…

『即、病院へ紹介します。緊急手術になります』

『そんな大変なことになっていたんですか?』

『そうなんです。乗ってきた車は、そのままにして、出来るだけ体と頭を動かさないように、タクシーで向かってください』

 

その日、緊急手術になったAさん。

Aさんの車は、しばらく当院駐車場にそっと置かれたままでした。

術式から、術後はベッドの上でうつむき姿勢(治療のため)を強いられているAさんを想像する院長でした。

 

幸い、Aさんの術後は良好。

視力も回復しました。

『助かりました~』

 

飛蚊症の原因は、病気ではないものがほとんどです。

しかし、網膜剥離や硝子体出血・炎症などの場合も、稀にあります。

気になれば、検査を受けてくださいね。

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2019.7.30 見えるのに見えない

小3のAちゃんが、学校からの受診のお勧め用紙を持って来院しました。

視力検査の結果、両眼D、D。

Dは0.4指標が見えないということです。

半年前に当院受診時は、右1.2左1.2でした。

もう一度、視力検査をしてみても、右0.1左0.1です。

矯正眼鏡を入れても、視力は上がりません。

念のため、点眼薬を使って、隠れている遠視がないかの確認もしましたが、遠視・近視・乱視とも問題ありませんでした。

眼球自体の問題はありません。

 

こういう場合『心因性視力障害』を疑います。

目の心身症の一つです。

ストレスが原因で、目に何らかの症状が出ることがあるのです。

視力障害として現れることが多いですが、色覚異常(色の見え方が違う)や眼瞼痙攣、チックとして現れることもあります。

 

眼科医ですが、念入りにヒアリングをします。

家族構成、学校での様子・友人関係、習い事などなど。

保護者と院長がお話をし、患者さんの話はスタッフが聞くことが多いです。

大人にとっては些細なことでも、本人にとっては重大なことであることが多々あります。

家庭内の問題では、『お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから』と、我慢することが多い、上の子の患者さんが多いように思います。

学校では、クラス替えなどで、友人と離れた、新しい友人が出来ない、授業についていけないからつまらない…など。

習い事でびっしり放課後のスケジュールが埋まっていますが、本人は乗り気ではないものの、親の期待に応えようと頑張っている場合。

なぜかピアノの時だけ楽譜が読めなくなる…など。

 

 

また『メガネ願望』から、視力障害を起こすこともあります。

クラスの子がメガネをかけ始めた…兄姉がメガネをかけ始めた…など。

メガネ願望の視力障害に、トリック(眼科医のさじ加減)を使ったメガネを処方すると…

次回、出来たメガネでの視力はバッチリ!です。

自分好みの素敵なメガネを、褒めてあげると、とても嬉しそうです。

『どこも悪くないのに~何で~』と決して本人に言ってはいけません。

 

心因性視力障害では、日常生活は見えるから生活に危険は及ばないのですが、いざという時(例えば視力検査)には、見えないのです。

 

保護者と面談をして、ストレスの原因の解決に向けての対応策や、時には点眼を使いスキンシップを図ることを提案します。

低学年のうちなら、『ぎゅ~』と抱きしめるのも効果的です。

 

たくさんの見えない(視力の出ない)小さな患者さんに向き合ってきました。

ワーキングマザーとして、決して出来た母ではありません(院長)が、自戒も込めてお話ししています。

子供が可愛くない親なんていませんが、良かれと思ってしていることや、無意識な行動や発言が、子供を傷つけていることも少なくありません。

親も精いっぱい、子供も精いっぱい。

時に、繊細な子は、心身症になってしまうこともあるのです。

親が反省することも多々ありますが、自分を認めてあげることも大事です。

特に仕事を持っていると、何か子の問題が起こったとき、『愛情不足?手間かけ不足?』と自分(親)が不安になりがちです。

後から振り返ると、子からずいぶん試練を与えられたけど、乗り切った!と思える日が来ます。(←院長自身のことです)

かかわる時間が少なくても、『大好き!』というメッセージと、子供の話を傾聴・共感することが大事です。

 

『だから、大丈夫です。必ず見えるようになりますよ』とお伝えします。

 

Aちゃんは、骨折でしばらく体育や課外活動ができず、疎外感を持ってしまったようです。

メガネをかけて、みんなが褒めてくれたことで視力も改善。

骨折も治り、元気に活動できるようになったら、メガネをかけることを忘れることも。

 

眼科医ですが、時々、精神科的アプローチをすることもあるのです。

 

 

 

 

 

 

 

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2019.7.9 はるばるハンバーグ

初夏になると、恒例のスタッフとのお出かけです。

『今年はどこに行きましょう?』

あれこれ考えているうちに…

一昨年、息子が友達と高速に乗ってハンバーグを食べに行ったことを思い出しました。

あの時は『たかがハンバーグに?わざわざ?暇だね~』と呆れていたにも関わらず、何故か、急にそのハンバーグが浮かびました。

『静岡のSハンバーグ食べたことある?』

『ないです。でも、すごく有名ですよね~うちの息子も行ってきました』(同年代Kスタッフ)

『こんな機会でもないと、一生食べないだろうから行こう!』

 

さすがに、『ハンバーグだけで静岡県』は、勿体ないので、他に行く場所を考えます。

昨年は、同方面のお寺巡りでしたが、ハンバーグは思いつきませんでした。

これも何かの縁。

 

静岡県にしかないSハンバーグは、かなり有名で人気があるらしく、GW中は400分待ちの店舗もあったそう。

Kスタッフは、毎日、お昼の待ち状況をチェックし、行程を組み立ててくれました。

『まずは、平日と言えども侮れないので、開店の11時ではなく、整理券配布の10時過ぎには到着します。

定刻通り11時入店しランチです。

女子のランチは弾むから余裕を持って、13時に第1の工場見学、15時に第2の工場見学予約しました!』

完璧なプラン!

 

東名高速で静岡県に向かいます。

第1の工場見学が袋井市内ということで、S袋井本店を目指します。

10時23分到着。

外観はウッディ風ですが、目立つ構えではありません。

駐車場は広々、車はゼロ。

全員小走りでお店の入り口に向かいます。

発券機で予約券を取ります。

栄えある?一番乗り。

良かった~

しかし、開店10分前までは、待合室を使えないので、駐車場周辺をぶらぶら。

15分前になると、にわかに人が増えます。

あれよあれよという間に待合室は一杯。

 

一番に呼ばれた私たちは、テーブルに案内されます。

既にSに来たことがあるスタッフが『頼むなら絶対げんこつハンバーグですよ!』

全員同じメニューをオーダー。

来たことがないオバサングループ(もちろん院長含む)は、『何か、ドキドキするね~』

 

お店のお姉さんが鉄板に載ったハンバーグを持って登場。

『(紙の)マットの端をお持ちください』

野球ボールサイズ(250グラム)の丸いハンバーグを二つに割って、鉄板にぎゅうぎゅう押さえつけます。

何かのショーみたいで、じっと見入る私達です。

紙マットで油跳ねを防いでから、各々が好きなだけ肉種を鉄板に押し付けて食べます。

今回が2度目というスタッフによると、生っぽいのが売り(新鮮な豪州牛肉100%)なんだそうです。

『ハンバーグは、中までしっかり火を通すように、普段調理しているから、なんか変な感じだね~』と言いつつも、初めての食感。

ステーキのレアならぬ、ハンバーグのレア。

院長は、いつものように一番に完食。

『誰か残すかも』の心配(残したら食べちゃおう)とは裏腹に全員完食。

デザートは別腹。

お店を出るころには、さらなる人が。

早く来て良かった!

 

次に大塚製薬工場でポカリスエットの製造工程を見学。

大塚製薬の点眼薬も展示してあり、スタッフ共々親近感が。

最新の自動化された工場はほぼ無人でした。

 

再び高速に乗り浜松へ。

うなぎパイファクトリーでの『窯出しうなぎパイツアー』(期間限定)です。

工場見学の後は、出来立てのうなぎパイをいただきます。

熱々でしっとりとして、定番のさくさくのとは、ずいぶん違いました。

パイにケーキとコーヒー、ここでもガールズトーク。

最後は、うなぎパイキャラクターと記念写真。

 

『お腹パンパンですね~』

『話のネタになりますね~』

『息子に自慢しよ~』

 

楽しい新体験、楽しくスタッフと共有した一日となりました!

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2019.6.11 活性酸素と抗酸化物質

ここ数年、夕食時は、ワインをグラス1杯いただきます。

『今日もお疲れ様!』と自分をねぎらい、赤ワインのポリフェノールで一日の疲れを帳消しに。

あらゆる面でオバサンを自覚し、老化を予防する『抗酸化成分』を、積極的に摂るようになった院長です。

 

眼の病気も、加齢に伴う『白内障』『加齢性黄斑変性症』などは、『酸化』が関与していると言われています。

 

『抗酸化成分』は、活性酸素を除去するのですが、そもそも『活性酸素』とは?

 

生物の身体は、細胞の集まりで出来ています。

その細胞の中に、ミトコンドリアという小器官があります。

呼吸で体内に入った酸素を利用して、生命維持のためのエネルギーを生み出します。

その時に、副産物である『活性酸素』も出します。

 

『活性酸素』は、高い酸化力(例えば鉄錆は酸化で起こります。錆びるイメージ)を持ち、良い働き・悪い働きをします。

良い作用としては、体内に侵入した細菌やウイルスを撃退します。

一方、過剰に発生した『活性酸素』は、細胞膜を破壊したり、DNAを傷つけたりすることで、病気の発症を促進します。

 

とはいうものの、細胞は、『活性酸素』だけでなく、活性酸素から身を守る『抗酸化“酵素”』も同時に産生しています。

食事から摂取できる『抗酸化成分』も『活性酸素』を減らします。

 

若い時は、『活性酸素』と『抗酸化酵素』のバランスが取れています。

肌はツヤツヤ、弾力があります。

病気もめったにしません。

さて、加齢により、『抗酸化酵素』を産生する機能が衰えてくると、『活性酸素』>『抗酸化酵素』となり、老体となり、病気にかかりやすくなります。

 

ずっと昔から、『活性酸素』も『抗酸化酵素』もあったはずですが、近年の解明によって、脚光を浴びるようになりました。

そして現代は、『活性酸素』が発生しやすい環境にあります。

ストレス

紫外線

放射線

加齢

感染

高血糖(食べすぎ)

激しい運動

たばこの煙

化学物質

ブルーライトなどなど。

どれもピンからキリまでですが。

 

院長は眼科医なので、目に特化すると、目は直接光(紫外線や放射線)にさらされることが多いので、『活性酸素』が発生しやすい部位と言えます。

実際、酸化ストレスは、眼の病気の一因であることが明らかにされています。

 

眼科的治療(点眼薬や注射・手術)も行いますが、日々の生活での養生も大事です。

『活性酸素』が発生しやすい環境を極力回避するのも一理です。

また、加齢により、体内で作られる『抗酸化酵素』の量が減るため、意識して『抗酸化成分』を摂ることも一理です。

ポリフェノール・カロテノイド・ビタミンC・ビタミンEなどを食事から摂りましょう。

 

よりしっかり摂るには、サプリメントもあります。

『眼科治療以外で、予防に何かできることは?』と思われる方は、ご相談ください。

眼科では、病気ごとに特化した成分が配合されたサプリメントも扱っています。

 

さて、本日も一日の終わりにグラス一杯のワイン、楽しみです。

 

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