2025.4.1 頑張ったら …
先日Aさんの結膜炎の治療が終了。
『今回はこれでおしまいです。また、何かあったら来てください』治療終了の際のいつもの台詞。
『あの…私、どうしても先生に言おうと思っていたことがあるんです…』
え?!何々、この改まった雰囲気?!
『息子のT、覚えてみえますか?』
Tくん、もちろん!
中学受験して進学したところまでは覚えています(それ以降は受診なし)。
『何かありましたか?』
『実は…』
T君は、学校の色覚検査で受診勧告され、当院で再検査して確定した。
その際、色覚特性の話や、進路就職の選択可能性の話などAさん(母)とT君に話をしました。
『あの時の言葉に支えられて、進路を考えました。楽器を弾くのが好きだったので、そちらの方向に進み、今では音楽家になりました。
きちんと説明してくださって感謝しています。いつかお礼を言わないとと思っていました』
今回の結膜炎での来院がお礼のチャンスと思われたそう。
『Tももう30超えたんですよ』
年月が流れるのは早い。
『検索してみてください』の言葉に、立派な音楽家のT君が現れました。
T君の話を聞きつつ、院長脳内検索エンジンがかかっています。
『T君、妹さんいらっしゃいましたよね?』
『はい』
『Mちゃん?!』
『そうです、先生すごい!』
Mちゃんは、心因性視力障害でみていました。
心因性視力障害とは、目に異常がなくても、視力が低下したり変動が起こります。
また、特有の視野障害を起こすこともあります。
病名の通り、心因性で、家庭内(兄弟姉妹との関係など)、習い事、友人関係などが原因の場合と、眼鏡に憧れる眼鏡願望の場合があります。
気のせい…にしてしまわず、しっかりと子供の声を聴くことが大事です。
院長自身、偉そうに言いながら、子供にちゃんと向き合えなかった母親だった自戒を込めて、小さな患者さんに接しています。
Mちゃんは、小学校には馴染めなかったけれど、新しい目標に向かって中学受験に臨みました。
いつの間にか、視力も回復。
自身も心因性視力障害の勉強をさせてもらった患者さんです。
『Mちゃん、今は?』
『SEとしてIT企業で働いています』
T君、Mちゃん、二人とも立派な社会人になって院長感涙ものです。
その日一番のプレゼントでした。
最近は記憶する必要性がどんどん減っています。
カルテも名前や番号で検索すれば、すぐに病名も内容も見ることが出来ます。
しかし、検索してもわからないことがあります。
それが、患者さんとのエピソードです。
簡単なエピソードはカルテに記載しますが、もっと深い話や診療とは関係ないここだけ(診察室)のエピソードは、院長の脳内のみです。
それでも、何か関連ワードから脳内検索すると、不思議に出てきます。
さらに、その家族までが…芋づる式に出てきます。
脳内検索処理能力、捨てたもんじゃなさそう。
こういうことを言うと、息子たちから『デジタル処理能力は低いことも自覚しないと!』と厳しい言葉。
先日も新幹線をネットで購入したら、ICカードに紐づけすることを知らなかった院長。
『そのまま行っても、改札でひっかかってた』息子があきれながらも紐付けしてくれました。
ご時世的には、デジタル処理脳能力向上しないと!
とはいうものの、無機質なデジタル検索能力より、脳内検索のほうが、名前からモノクロ画像・思い出、まつわる暖かみと広がりをもたらしてくれます。
院長脳内の患者さんデータは門外不出であり、宝物です。
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